【介護保険あれこれ】特定事業所集中減算とこれからのケアマネージャー
長 幸美
アドバイザリー4月21日の介護保険あれこれの中で、これからのケアマネージャーの役割について述べてきました。今回は、特定事業所集中減算について考えてみましょう。
特定事業所集中減算は今まで一部のサービスに限定され、集中率も90%とされていました。これは「ケアマネージャーの公平・中立性を確保する」という観点から実施されているものです。この適応が、全ての介護保険事業に拡大され、さらに集中率も80%に引き下げられました。この特定事業所集中減算は、減算されるだけではなく、特定事業所加算の取得も出来なくなるため、多くの事業所で対応に苦慮されているとお聞きしております。
特定事業所集中減算は、現在準備期間となっておりますが、今年の9月1日から翌年2月末日までの実績を基にして3月に届出(報告)、正当な理由無く特定の事業所の利用が80%を超えていた場合は、4月1日から9月末日までに減算の算定となります。(下記一覧表参照)
この「正当な理由」というところがポイントになると思われます。
実績データの期間 | 報告期限 | 算定期間 |
9月1日~翌年2月末日 | 3月15日 | 4月1日~9月末日迄 |
3月1日~8月末日 | 9月15日 | 10月1日~翌年3月末日迄 |
また、適用除外の要件が出されています。Q&Aの中に詳しい事例の記載が出されていますので、集中減算にかかりそうな場合は是非確認してみてください。
①地域にサービス事業所数が少ない・・・5事業所未満
②特別地域居宅介護支援加算を受けている事業者である場合
③判定期間の平均居宅サービス計画件数が20件/月以下である(小規模介護支援事業所)
④判定期間の1ヶ月当たりの居宅サービス計画のうち、それぞれのサービスが位置づけられた計画件数が平均10件/月以下
⑤サービスの質が高いことにより利用者の希望を勘案した場合などにより特定の事業者に集中していると認められる場合
⑥その他正当な理由であると都道府県知事が認めた場合
皆さん、如何でしょうか?
③④については、居宅支援事業所の分割・・・つまり小規模にする事で回避する事も出来るでしょう。また、合併して拡大することにより集中減算を回避するなどが考えられます。けれど、居宅介護支援専門員の「公平・中立性」の観点からは如何でしょうか?
小規模化する事により「不測の事態」のときに、受け持ちの利用者様のケア・コーディネートの妨げになる等のリスクを抱えることにはならないでしょうか?
⑤サービスの質が高いので「この事業所のデイケアが受けたい」「この事業所は柔軟な介護対応をしてくれるので」「この訪問看護師さんが夜間の対応も嫌がらずに受けてくれるし、ケアの質も高い」などという理由で選んでいただけているとしたら、凄いことですよね。
しかし、利用者様に選ばれたことにより「特定事業所減算」を受けるということになり、他の事業所を紹介するような事になれば、「利用者本位」の介護保険の理念から外れることになりかねません。介護保険のあり方が根本から覆されることになります。
地域のケアマネージャーとして、このような状況を行政へ向けて発信すること、働きかけを行う場として「地域ケア会議」「ケア推進会議」を利用していくことも必要です。
今回の集中減算の対応策として、他の事業所と「ケアプランの交換」や「サービス事業所の変更」を考えている居宅支援事業所や介護事業所もあるということをお聞きしておりますが、本当に利用者のためになっていますか?
一時的には効果があるとは思いますが、根本的な解決にはならないように思います。
この特定事業所集中減算は、「サービス付き高齢者向け住宅等の囲い込み」に対する警鐘です。「利用者本位」であるか?「質の高い良い介護サービスの提供」をしているか?という観点で、一度見直してみることも必要です。
地域包括ケアシステムを構築する中で、一番重要なことは「高齢者がその人らしく地域の中で安心して生活し続けるために支える」ことでございます。「弱者である高齢者が安心して暮らせる」ということは、「子育て世代も安心して暮らせる」ということでもあります。様々なサービスの中で、「公平に」「中立に」医療・介護・福祉のサービスを「利用者の目線」でコーディネートする事により、地域の中のサービス事業所も質の向上が出来て、どこの事業所を選んでも良いという状況になることが理想であると考えます。
皆さんも一度、立ち止まって地域を、事業を、振り返ってみませんか?
地域の事業所として、ケアマネージャーとして、地域包括支援センターとして、どのように地域を支えていくことができるか、お住まいになっている方とともに考えてみましょう!
<参考資料>
平成 27 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(平成 27 年4月 30 日)
平成 27 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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