知っておきたい「療養担当規則」あれこれ④~その他の大事なルール~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
第1回では「療養担当規則とは何か?」という入口から始め、「保険医療機関としてのルール」、そして、必要に応じた処置や投薬の考え方など、「保険医としてのルール」を具体的に見てきました。
第4回では、診療の方法や医師の対応姿勢ではなく、「療養担当規則に基づく制度運用」に関する規定の中から、特に保険外併用療養費・定例報告・診療録様式といった、医療機関運営上重要なルールについて、実務に役立つ視点で整理してみたいと思います。
保険外診療との併用、ちゃんと届出できていますか?
保険外併用療養費とは、保険診療と保険外診療との併用を認めるためのルールで以下のように記載されています。
第五条の四 保険医療機関は、評価療養、患者申出療養又は選定療養に関して第五条第二項又は第三項
第二号の規定による支払を受けようとする場合において、当該療養を行うに当たり、その種類及び
内容に応じて厚生労働大臣の定める基準に従わなければならないほか、あらかじめ、患者に対しそ
の内容及び費用に関して説明を行い、その同意を得なければならない。
2 保険医療機関は、その病院又は診療所の見やすい場所に、前項の療養の内容及び費用に関する
事項を掲示しなければならない。
3 保険医療機関は、原則として、前項の療養の内容及び費用に関する事項をウェブサイトに掲載し
なければならない。
保険外併用療養費・・・つまり保険診療をしながら保険外診療(自費)ができるのか?といえば、いわゆる「混合診療」ということになりますが、混合診療として実施できる範囲が記載されています。この告示についてはまた後日掲載したいと思いますが、今回は、この療養担当規則の中で、原則が記載されているということを覚えていただけたらと思います。
また、詳細を確認されたい方は、厚生労働省のホームページをご確認ください。
〇保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等
⇒選定療養費については(こちら)をご覧ください。
〇先進医療の概要について
⇒先進医療や評価療養・患者申出療養については(こちら)をご覧くださいませ。
〇「保険外併用療養費制度について」
⇒保険外併用療養費制度全般の説明については(こちら)をご覧くださいませ。
「評価療養」「患者届出療養」については、厚生労働省にそれぞれ「先進医療」の実施について承認を受ける必要が出てきますので、かなりハードルは高いかなと思います。興味がある医療機関の皆さんはご確認ください。
〇「患者申出療養費制度」については(こちら)
「選定療養費」を算定するためには、地方厚生局へ事前の届け出(報告)が必要です。
〇九州厚生局/保険外併用療養費の報告
⇒報告の書式等が掲載されています。
この中で重要なことは、
①掲示(内容と金額の院内掲示及びWebサイトへの掲載)していること
②患者・家族への説明と同意があること
③事前にもらう金額等を届出(報告)していること
この3点になります。
「定例報告」って何のこと?ルールと実務の注意点
「定例報告」とは、施設基準を取得している医療機関の実施状況を年に1回報告するもので、「施設基準の届出状況等の報告(定例報告)」といわれるものです。7月に案内が来て、8月に報告書を作成し提出するのですが、この根拠が療養担当規則の中に記載されています。
(報告)
第十一条の三 保険医療機関は、厚生労働大臣が定める療養の給付の担当に関する事項について、地方厚生局長又は地方厚生支局長に定期的に報告を行わなければならない。
2 前項の規定による報告は、当該保険医療機関の所在地を管轄する地方厚生局又は地方厚生支局の分室がある場合においては、当該分室を経由して行うものとする。これは、いわゆる「定例報告」や「施設基準実施状況報告書」の根拠となる条文です。
つまり、施設基準を満たしているかどうかを自主点検して、報告することになります。
近年では、Webサイトから報告書をダウンロードして提出することとされています。
〇九州厚生局/「施設基準の届出状況等の報告(定例報告)」の報告書一覧
⇒報告書の様式は(こちら)からダウンロードできます。
紙ベースで期日必着で郵送するわけですが、最近では、電子報告もできるようになってきました。
うちの診療録、本当にルールを満たしてる?
療養担当規則の中で、「診療録」及び「処方箋」の様式が定められています。
必要な項目を満たしていれば、診療録の様式を医療機関独自で作り変えることも可能ですが、指定されている項目を省くことはできません。
医療機関独自で様式内容を変更し使用していた診療録を、後日の指導時に、「必要項目がない為、診療録として認められない」と指摘された医療機関から「どう対処していけばいいのか」というご相談を受けることがあります。
例えば、「様式第1号の1」と呼ばれる様式はいわゆる診療録の表紙です。
この中には傷病手当や労災にかかる「労務不能に関する期間」を記載する欄がありますが、小児科等で必要ないからと言って省くことはできません。ただし行数を減らす等の工夫は認められる場合がありますので、変更する場合には必ず厚生局に相談されることをお勧めします。
「様式第2」については処方箋の様式です。通常の「処方箋」と「リフィル処方箋」について様式が分かれていますので、必要に応じて使い分けが必要となります。
まとめ
今回、知っておきたい「療養担当規則」あれこれと題し4回にわたり「療養担当規則」の大事なところ(内容)を見てきました。保険診療を行う上での細かなルールが書かれていることがご理解いただけたでしょうか?
日頃何気なく行っている医事業務の中で、たとえば「定例報告?? あの7月に届いて慌てて8月に出す書類だよね」と言いながら、8月末に慌てる事務員さんにならないように気を付けてくださいね。
――「何気なくやっている業務には、ちゃんと意味と根拠がある」――
今回のシリーズで、そんな気づきを得ていただけたら嬉しいです。
この療養担当規則については、2年に1回の診療報酬改定の時に少しずつ変更されます。改定時にはどこか変わったかを必ず確認する作業を行うようにしましょうね。
【参考資料】 R7.9.10確認
■厚生労働省/保険医療機関及び保険医療養担当規則
⇒本文の最後に「診療録(様式第1)」「処方箋(様式第2)」の様式があります。
※「保険外併用療養費制度」関連、及び「定例報告」等については本文中のリンクをご確認ください。
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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