
知っておきたい「障害者総合支援法」あれこれ①~制度を理解しよう!~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
私たち医療機関の窓口では、時折「この医療証、使えますか?」「助成制度の対象ですか?」といったお問い合わせを受けることがあります。
「なんとなくわかりにくい」「難しい制度」・・・と、苦手意識をお持ちの方もお見受けします。
しかし患者さんによっては自宅で生活をするうえで、また仕事をしながら治療を継続するうえで、とても大事な助成制度であることを理解しましょう。医療機関の窓口でも、相談できる制度があるということを知り、制度の背景や概要を理解しておくことは、患者さんに安心感を届けるうえでもとても大切です。
今回は、「重度障がい者医療費助成制度」が生まれる土台となった法律――「障害者総合支援法(旧、障がい者自立支援法)」について、シリーズでお話ししてみたいと思います。
まずは第1回目として、「障がい者自立支援法」の概要・制度の背景をお話しします。
障がい者を支援する法律とは?
「障がい者自立支援法」とは、障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、障害者基本法の基本的理念にのっとり整備された法律です。
かつては、障害の種類ごと別々の法律で支援が行われていました。
具体的には、その方の障害ごとに、以下の4つの法律に基づき支援されていました。
・身体障害者福祉法(昭和24年)
・知的障害者福祉法(昭和35年)
・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年)
・児童福祉法(障害のある児童への対応)
しかしながら、障害の種類によって、支援内容や対象がバラバラで、障がいのある方やご家族にとっては非常にわかりにくく、また支援が十分に行き届かないという課題がありました。
そこで、すべての障がい者(身体・知的・精神)および障がいのある児童が、ひとつの枠組みでサービスを受けられるように整備されたのが、2006年(平成18年)施行の「障がい者自立支援法」です。
目的(第1条)
障がい者自立支援法は、その目的を次のように定めています。
この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、障害者および障害児がその有する能力および適性に応じて自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。
(障がい者自立支援法 第1条)
つまり、この法律は、「すべての障がい者が、できるかぎり自分らしく生活できる社会を実現する」ことを目指したものです。支援の対象は、障がいの種類に関わらず、広く包括されています。
「自立支援」とは?
ここでの「自立支援」とは、「何でも自分でやりなさい」という意味ではなく、自分らしい暮らしを選び、地域の中で自分の力を発揮できるように、社会が支えるという考え方です。
障がい者自立支援法では、利用者が自らサービスを選択し、必要な支援を受けながら生活していけるように制度設計がされています。
医療費助成制度も、その「必要な支援」の一部として位置づけられているわけです。
国・自治体の責務(第2条)
この法律では、障がい者の生活を支えるために、それぞれの立場で役割分担が定められています。
【市町村】
障害福祉サービスの提供や医療費助成、相談支援など、最も身近な窓口として対応します。
【都道府県】
市町村を支援し、専門的な指導や相談、医療費支給事務などを行います。
【国】
制度全体の設計・指導を行い、地方自治体の実施を支援します。
私たち医療機関は、直接制度を運用する立場ではありませんが、患者さんの相談(お困りごと)に耳を傾け、適切な情報提供を行う“つなぎ役”として、重要な存在です。
医療費助成制度の「入口」としての役割~「障害者総合支援法」
この「障がい者自立支援法」は、2013年に「障害者総合支援法」へと発展し、現在はその中でさまざまな制度が運用されています。
その中に含まれるのが、「重度障がい者医療費助成制度」です。
いわゆる「障がい者医療制度」ですね。皆さんも「障害医療証」「障がい者医療」など耳にされたことがあるのではないでしょうか?
患者さんがこの「重度障がい者医療費の助成制度」を利用するには、障がい者手帳の取得や医療証の申請が必要になります。
医療機関の先生方はこの「障害認定」を受けるための診断書の作成をして、「障がい者手帳」の取得のお手伝いをしたり、受付では、これらの手続きの案内をしたり、また、医療証を確認して保険請求をしたり・・・と様々に関係してくることがありますね。
次回(第2回目)は、この「重度障がい者医療助成制度」について、対象者や手続き、医療費助成を受けるための施設のことなど、詳しく見ていきましょう!
<参考資料> 令和7年8月6日確認
■厚生労働省/障がい者自立支援法
■内閣府/障がい者総合支援法の改正について
■福岡市/重度障がい者医療費助成制度
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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