現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)について

佐藤 正典

その他

最近、テレビや新聞で取り上げられている、現代貨幣理論(MMT)についてご紹介します。
現代貨幣理論(MMT)は、現代経済の貨幣が借用書により成立していることを捉え、政府は税収に制約される必要はなく、任意の自国の通貨建て国債発行により財政支出量を調整することで、望ましいインフレレベルを目指す経済政策を行うことを理論的主柱としています。また、政府は、将来の支払いに対して非制限的な支払い能力を有していることから、政府の債務超過による破綻は起こりえないとしています。つまり、財政赤字が拡大しても、自国の通貨建て政府債務は不履行(デフォルト)しないとして、政府に積極的な財政出動を促す理論であり、米国などで議論を呼んでいます。
これについて、黒田日銀総裁は、講演後の質疑で「極端な主張で、米国の学会を含め広く受け入れられていない考え方だ」と述べており、政府債務残高が極めて高い水準の日本は、この理論が、あてはまるとも指摘されていることについては、「全くの誤り。日本政府は中長期的に持続的な財政構造を確立するための取り組みを進めており、財政赤字や債務残高を考慮していないというスタンスにはない。日銀が金融政策で国債を買い入れているのは物価安定目標実現のためであり、政府の財政ファイナンスではない」と反論しています。
その上で、「無制限の財政ファイナンスは、必ず高いインフレをもたらし、その収束のために経済に大きなダメージを与えることが歴史の教訓であり、MMT の理論は正しいとは思わない」と否定的な考えを強調しています。実際、日銀の国債買入は、民間銀行から日銀へ国債の保有が移るだけで、新たな通貨を生み出すことはなく、日本では、政府発行の国債を日銀が直接引受けること(財政ファイナンス)が原則禁止されていることから、MMT は実現困難な理論と言えます。

【参照:2019 年5 月18 日 日本経済新聞記事より】

総務課 マネジャー

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