【医療介護あれこれ】在宅医療における多職種連携②~退院後の生活を見据えた支援~

長 幸美

アドバイザリー

これまで薬剤師や管理栄養士の立場からの「連携」「在宅支援」ということについて何度かお話をしてきました。
今回は前回の「入院時から始まる退院支援」に引き続き、入院中の支援を考えていきたいと思います。在宅にかえるためには、患者の立場から見て、どんな支援が必要なのでしょうか?

入院中は治療に専念し、退院後のことは退院してから考えればいいか・・・というのは、ありえません。入院中は服薬管理も、薬剤師さんや病棟の看護師さんにお願いしていて、退院後は本当にご自身で準備をして間違いなく服薬することができるでしょうか?
退院後、日中ひとりになる方が、バリアフリーではない空間をお手洗いまで歩き、用を足すことができるでしょうか?

私が病院勤務時代に、リハビリを頑張ってある程度歩くことができ退院された患者さまが、1週間もしないうちに再入院された経験が何度もあります。
おひとりの方は、お手洗いまで歩行することはできるが、ドアノブをひねって開けることや、狭いトイレの中で方向を変えることができず、バランスを崩し、転倒され起き上がることもできずに近所の方が救急搬送を依頼されたケース。
また、家具などを手すり代わりに移動しているときにバランスを崩して家具と一緒に転倒されたケース。
さらに、服薬ができずに状態が悪化したケースや、配食サービスの食事を半分食べ、冷蔵庫に保管せずに翌日食べておなかを壊したケース・・・様々でした。

このようなときに、入院中にご自宅の様子を確認しに行き、必要と思われる介護サービスについて検討すること、試験外泊を行い外泊時に訪問看護を活用することなどもできるようになっています。お試し外泊(試験)で、お家で過ごしてみるというのもいいのかもしれません。

【訪問看護ステーション:訪問看護基本療養費Ⅲ(8,500円)】
入院患者が退院後の生活をイメージするために試験外泊を行うときに、訪問看護を利用できる場合があります。
対象者と回数に制限はありますが、活用して自宅で過ごしてみるというのもよいのではないでしょうか。特に、ご自宅で処置等が必要な場合などはお勧めしたいものです。

■訪問看護基本療養費Ⅲの対象者
・厚生労働大臣が定める疾患等別表第7に定める患者・・・2回まで算定可能
・厚生労働大臣が定める状態等別表第8に定める患者・・・2回まで算定可能
・外泊時に訪問看護が必要と認められたもの ・・・1回限り

■入院医療機関: 介護支援等連携指導料400点
医療機関に入院中の利用者に対し、医師又は医師の指示を受けた看護師、社会福祉士、薬剤師、理学療法士等が相談支援専門員又はケアマネジャーと協働して利用者の心身の状態などを踏まえて導入が望ましい介護等サービスや退院後に利用可能な介護等サービスについて説明・指導を行った場合に算定できます。1入院中に2回までの算定が可能です。

■自宅療養中のALS患者(意思疎通が困難な場合など)の入院時の対応
自宅療養を行っている重度障害支援区分6以上の利用者が入院した場合に、入院先の医療機関でも引き続き自宅に来ていたヘルパーを月の支給限度時間枠の中で利用できる仕組みがあります。
これは重度訪問介護により提供する支援が、利用者と病院職員との意思疎通を図るうえで必要な支援として認められているものです。主なものはALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者など、眼球の動きと文字盤を使用して意思疎通を行う場合など、日常的にかかわっているヘルパーさんの方がスムーズに行えることを評価されたもので、入院加療の受入れ病院の負担も軽減できるのではないでしょうか。

【患者さんが退院後の生活にのぞむもの】
入院が決まった時に、または、入院した時に、患者さまやご家族さまが一番心配なことは、本当に無事に退院できるのだろうか? これまで通りの生活が送れるのかしら? ということだと思います。
意思疎通が困難な患者さんの場合は、入院中の生活について、医療機関も家族以上に不安かもしれません。
そこにしっかりと寄り添い、連携を取りながらサポート体制が取れるとどんなに安心でしょうか?
患者さんの状態に応じて、退院後の生活を見据えながらサポート体制を考えていくことが大事なことではないかと思います。

次回は退院前後について考えていきましょう。

医業経営支援課

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