令和8年度診療報酬改定速報~かかりつけ医機能の再整理と実務対応のポイント
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
令和8年度診療報酬改定(R8.2.13 中医協答申)では、かかりつけ医機能に関わる複数の項目が見直され、より明確に「地域のハブとしての診療所像」が示されています。
今回の改定は、点数の増減だけではなく、算定要件を再整理し、実質的に「普段の診療・相談・連携」を評価する方向が強まったことが特徴になっていると思います。
地域医療の中での役割分担や機能分化・・・これは病院だけのものではありません。
今回はクリニックの「かかりつけ医機能」についてみていきましょう!
目次
機能強化加算の要件見直し
かかりつけ医機能の「入口」を担う評価である機能強化加算は、今回の改定で届出の形式よりも日常の診療実践を重視する方向に再整理されました。
とりわけ、地域連携・相談対応・服薬情報の把握と調整など、これまでも掲げられてきた要素が「実際にどのように診療されているか」という観点で問われているように感じます。
また、外来のデータ活用やBCP(業務継続計画)整備については、算定の「必須要件」に加わりました。直ちに追加されたわけではないものの、かかりつけ医として望ましい標準装備として位置づけが明確になってきました。これは、診療の質を「見える化」できる体制と、非常時にも継続して地域の入り口を守れる体制を備えることが、今後の機能強化加算にふさわしい診療所像として実質的に求められている、というメッセージではないでしょうか。
このメッセージを実践していくには、以下のことを念頭に検討する必要があるのではないかと思います。
・掲示・HP・案内文
⇒「相談・連携・時間外対応」の流れが患者にも職員にもわかりやすい表現へ見直す!
・相談・紹介・服薬確認の記録様式を一本化
⇒「やっている」ではなく「証跡で示せる」を意識する。
「証跡」とは業務やITシステム操作が「いつ・誰が・何をしたか」というルールに従っている
かを、第三者に客観的に示すための「証拠となる記録(ログ)」です。
・データ活用(充実加算への取り組み強化)とBCPの整備・訓練
詳細は、告示・通知文で確認するようにしていきましょう!
生活習慣病管理料(Ⅰ・Ⅱ)の見直し
生活習慣病診療は、いまやかかりつけ医の中心的役割です。今回、管理料の要件が見直され、計画書の適切な作成、医療DX活用、データ提出など、継続管理の質と情報の整合性が求められる内容に進化しました。具体的に言いますと以下のような点です。
①療養計画書の「患者署名」が不要に(Ⅰ・Ⅱ共通)
2024年度に導入された「計画書への患者署名」は、令和8年度改定で不要となりました。
しかし、計画書そのものは引き続き必要で、記録については、むしろ重要になるのではないかと思います。つまり、公布日や説明者・説明方法等、カルテの記載は大事になってくるでしょう。
② 管理料(Ⅰ)に「6か月に1回以上の血液検査等」要件を新設
生活習慣病管理料(Ⅰ)は検査料が包括のままですが、最低でも6か月に1回の血液検査等の実施を算定要件として明記されています。これは「包括の月は検査を避ける」という運用を行っている医療機関への明確な警鐘であり、包括であっても“適切な頻度で検査しながら管理すること”を求めるとのメッセージでしょう。検査を行いフォローすることが条件として明確になったと言えます。
皆さんの中に、「検査をしている月は出来高で」と算定を変更されていることはありませんか?
検査まで含めて運用することが求められている為、高い点数設定となっていますので、検査期間が空いている場合は見直していくようにしましょう。そして、改めて、検査を実施したうえでしっかりと管理していくことが要件とされたことへの意味合いを考えていきましょう。
検査せずに管理料(Ⅰ)のみ算定している医療機関への警鐘であると感じます。
③眼科・歯科との連携評価を新設(年1回・各60点)
糖尿病を主病とする患者で、眼科または歯科と連携(受診の必要を認め、同意のうえ受診・連携)した場合の「眼科医療機関連携強化加算」「歯科医療機関連携強化加算」が新設(年1回・各60点)されました。糖尿病診療での眼・歯周の重症化予防を、かかりつけ医がハブとして推進することを求めています。紹介様式・返書管理の整備が必須になります。
④ 在宅自己注射指導管理料との併算定規制を“限定化”
糖尿病を主病とする患者について、在宅自己注射指導管理料との関係が見直しとなっています。
注1に規定する厚生労働大臣が定める薬剤 とは・・・
・インスリン製剤
・グルカゴン様ペプチド―1受容体アゴニスト
・インスリン・グルカゴン様ペプチド―1受容体アゴニスト配合剤
と、記載があり、これらの薬剤と明確にされました。
⑤生活習慣病管理料(Ⅱ)で「別途出来高」算定可能な医学管理料が拡大
生活習慣病管理料(Ⅱ)は出来高併算定の幅が拡大されました。
例:特定薬剤治療管理料、悪性腫瘍特異物質治療管理料、喘息治療管理料、がん患者指導管理料、地域連携夜間・休日診療料、救急外来医学管理料、外来腫瘍化学療法診療料、認知症関連の管理料、各種診療情報提供・連携評価、意見書交付料 等を包括から除外して別途算定が可能になりました。
これは、生活習慣病管理料の対象疾患以外の状態について、切り分けて考え、しっかりと対応してほしいというメッセージではないかと思います。薬剤管理が必要な場合や悪性腫瘍などの場合、認知症等、算定が可能となっていますので、しっかりと確認しておきましょう。
充実管理加算
令和8年度改定で、従来の外来データ提出加算(50点)が廃止され、
その代わりに 生活習慣病管理料(Ⅰ・Ⅱ)に上乗せできる「質の評価加算」として創設されたのが
「充実管理加算」です。外来データ提出を前提とした“質の評価”が導入された点が重要です。
これは、外来診療データ(治療内容・管理状況等)を提出している医療機関のうち、生活習慣病管理をガイドラインに沿って適切に実施している点を評価するものであり、かかりつけ医の慢性疾患管理を“実績で可視化”する仕組みです。生活習慣病管理料(Ⅰ・Ⅱ)に月1回上乗せ算定が可能となっています。
主病ごとに3段階(加算1・2・3)の区分(脂質異常症/高血圧症/糖尿病 × 各30・20・10点)となっていますが、詳細はまだわかっていませんので、告示・通知をよく確認する必要があります。
| 点数(月1回) | 要件 | |
| 充実管理加算1 | 30点 | 十分な実績 |
| 充実管理加算2 | 20点 | 相当の実績 |
| 充実管理加算3 | 10点 | その他(実績無し) |
現時点では、何をもって「十分な実績」というのか、「相当の実績」とはどの程度のものなのか、明確になっていません。しかし、現時点で言えることは、診療実績として、可視化できない状況(データを出すことができない)では管理しているとはいえないので算定要件としてデータを出すことを求めてくることが予測されるのです。
また、経過措置があります。2026年3月31日時点で外来データ提出加算の届出をしている医療機関は、
2027年3月31日まで“加算1(最高区分)”にみなし適用される予定となっています。データを出している医療機関は優遇されるということでしょうか・・・。
「地域包括診療加算」と「認知症地域包括診療加算」の見直し
地域包括診療加算、認知症地域包括診療加算の対象患者に、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全又は慢性腎臓病のいずれかの疾患を有しており、かつ、介護給付又は予防給付を受けている要介護被保険者等である患者を追加する、とされました。
つまり、対象疾患・患者範囲が見直され、より「包括的管理が必要な患者」を選択的に評価する方向に調整されていると思われます。
また、地域包括診療加算及び地域包括診療料を算定する保険医療機関の連携薬局について、緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等の薬剤の院内処方が可能な体制が整備されている保険医療機関に限り、
24時間対応の体制が整備されていなくてもよいもの、とされました。地域に24時間対応の薬局が無くても算定できるようになり、少し緩和措置が取られたと言えるのではないでしょうか?
参考までに連携調剤薬局については、以下の通り新しい基準として、記載されています。
「シ 診療を担当する医師は、地域包括支援センター、認知症地域支援推進員又は若年性認知症支援コーディネーターと連携し、ピアサポート活動、本人ミーティング又は一体的支援事業等の認知症患者の診断後支援に係る取組について、必要に応じて、認知症患者又はその家族に対して案内を行うことが望ましい。」
つまり「かかりつけ医は、診断後の伴走支援も含めた「地域の支援資源」につなぐ役割を担ってほしい」という方向性を明確に打ち出している、というふうに解釈できます。
この改定は、「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」も同様の変更とされていますので、該当する医療機関はよく確認しておきましょう。
「時間外対応体制加算」の名称変更と点数引き上げ
「時間外対応加算」が名称変更され、「時間外対応体制加算」のうえ、全区分で点数が引き上げられることが明示されました。24時間対応の実質化を図るため、加算名に「体制」を追加し、点数も引き上げられました。
| 改定前 | 改定後 | 施設基準 | |
| 時間外対応体制加算1 | 5点 | 7点 | 院内で24時間対応する体制(常勤医等) |
| 時間外対応体制加算2 | 4点 | 5点 | 院内で24時間対応する体制(非常勤でも可能) |
| 時間外対応体制加算3 | 3点 | 4点 | 時間外~22時頃まで電話転送等で対応する体制 |
| 時間外対応体制加算4 | 1点 | 2点 | 近隣の数件の医療機関と当番制で対応する体制 |
これは「かかりつけ医機能」の中心に「相談・初期対応」が置かれたことを示す動きであると考えられます。つまり、「24時間連絡できる番号が機能しているか」ということが重要視されると考えられます。
まとめ:今回の改定が示す“かかりつけ医のアップデート”
今回の改定から導かれるメッセージは明確です。
・ 適切な診療と相談
・ 地域連携
・ 在宅医療との接続
・ データ提出・医療DX
・ 24時間対応の体制整備
そして最後に、「診療の質をデータで示すこと(可視化すること)」
すなわち、診療所の役割は 「患者の生活と治療を支える中核」として、
地域の中で機能を発揮し続ける存在へアップデートされたと言えるでしょう。
そして何度も言うようですが、詳細はまだまだ明らかになっていないことが多いのも事実です。
告示・通知など、今後厚労省から出される文書によりしっかりと確認していくようにしましょう!
<参考資料> ※確認令和8年2月21日
◆厚生労働省/中医協(総-1)「個別改定項目について」令和8年2月13日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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