令和8年度診療報酬改定速報~物価高騰対策と外来ベースアップ評価料

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

令和8年度診療報酬改定は、物価高騰への対応医療従事者の賃金アップ冒頭から明確に打ち出された点が注目点になっています。中医協(R8.2.13)の答申では、初・再診料や入院基本料の引き上げに加え、令和8年度及び令和9年度は「物価対応料」という新たな加算が創設されました。
さらに、外来・在宅ベースアップ評価料は区分拡大・大幅引き上げ・段階評価(R9.6以降の再引上げ)という強力な設計となりました。

今回は、診療所中心に、速報ではありますが、内容を見ていきたいと思います。

物価高騰対策~2年間の「物価対応」を明示、基本料も底上げ~

冒頭に、「これまでの物価高騰による医療機関等の物件費負担の増加を踏まえ、初・再診料等及び入院基本料等について必要な見直しを行う。また、令和8年度及び令和9年度における物件費の更なる高騰に対応する観点から、その担う医療機能も踏まえつつ、物価高騰に対応した新たな評価を行う。」とされ、基本診療料を見直し、さらに別枠で「物価対応料」が新設されました。

初診料・再診料・入院基本料の見直し

初診料は291点で据え置きとされましたが、再診料は75点→76点に引き上げとなりました。
入院料も機能別に底上げされ、「急性期病院一般入院基本料」など新設でメリハリ配分が図られています。 これは急性期など医療機能により物価高の影響を受けやすいと思われるところに高く配分するように配慮されているということです。

項目旧点数(R6)新点数(R8.6~)差額
初診料291点291点
再診料75点76点1点

初再診料が包括されているその他の点数、訪問診療料及びその他の入院料等についても同様に対応することとされています。

【新設】物価対応料(外来・在宅/入院)

令和8年~9年度の物価上昇に段階的に対応するために、初診料・再診料や訪問診療料に上乗せできる加算が新設されました。また、この「1_外来・在宅物価高対応料」及び「2_入院物価対応料」については令和9年6月からは100分の200の算定・・・つまり2倍になる予定となっています。

出典:中医協「個別改定項目について(R8.2.13答申)より

ここに記載されている以外の入院料については、それぞれに算定する入院基本料に応じて、物価対応料が設定されていますので、新旧対照表や告示でご確認ください。

ベースアップ評価料~賃上げの“実効性”を担保する段階評価~

令和6・7年から継続的に賃上げしてきた医療機関は、令和8年6月~令和9年5月、および令和9年6月以降で上位の点数が算定可能になります。つまり令和8年3月現在ベースアップ評価料を算定し職員のベースアップを実施している医療機関では、実施していない医療機関に比べ優遇した点数配分になっています。

まだ施設基準の届出をされていない医療機関は、2月中の施設基準の届出をお勧めします。
一方、賃上げに取り組まない医療機関は入院基本料等で減算という“強いシグナル”であり、「処遇を改善したうえで、人材確保していってほしい」というメッセージでもあります。

賃上げを「やれば点数が上がる」「やらなければ減算」という形を制度に織り込み、人材確保と処遇改善の実効性を担保する仕組みとなっています。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

ベースアップ評価料の「基準」とも考えられている「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」がどのように変化していくのか見ていきましょう。

以下の表は、短冊の中に記載されているものを、医科(外来・在宅)に関する主要項目の抜粋です。R9.6以降は段階的再引上げが行われ、新点数の2倍(100分の200で算定)になる予定となっています。
なお、訪問診療の項目で(イ)=同一建物居住者等以外/(ロ)=同一建物居住者等 と読み替え見ていただければと思います。

A)令和8年度から新規に届出・算定する医療機関

項目旧点数(R6.6~R8.5)新点数(R8.6~R9.5)差額
初診時6点17点+11点
再診時2点4点+2点
訪問診療(イ)同一建物居住者等以外28点79点+51点
訪問診療(ロ)同一建物居住者等7点19点+12点

B)令和6・7年度から“継続賃上げ”を実施し、R8でも継続する医療機関(注5)

項目旧点数(R6.6~R8.5)新点数(R8.6~R9.5)差額
初診時6点23点+17点
再診時2点6点+4点
訪問診療(イ)同一建物居住者等以外28点107点+79点
訪問診療(ロ)同一建物居住者等7点26点+19点

この「B(注5)」がどのような医療機関が対象になるかというと、
令和8年2月までにベースアップ評価料を届出し、令和8年3月現在実際に「ベースアップ評価料」を算定していること、かつ、令和8年6月以降も引き続きベースアップ評価料を算定して賃上げを継続していく医療機関が対象になります。届出済みか否かが改定後の実務上の分岐点になります。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)~Ⅰだけでは賃上げ財源が不足する医療機関向けの“上乗せ枠”~

「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」は、(Ⅰ)の算定見込み額だけでは、対象職員の賃金改善が概ね1.2%に届かない医療機関が追加で届出できる上乗せ評価です(届出要件・算定ロジックはR6現行の枠組みを基本に、R8改定後も踏襲されます)。

現行(R6)の区分は「8区分」(Ⅱ-1~Ⅱ-8:初診・訪問は8~64点、再診は1~8点)で、不足分の大きさに応じて区分を選択する設計です。R8改定後は、評価料(Ⅰ)の大幅引上げ・R9.6段階アップに連動して、評価料(Ⅱ)も実態に合わせて不足原資を補えるよう運用改善が図られる方向ですが、具体的な区分数や刻みの確定値は、告示・通知(疑義解釈を含む)の確定版で再度確認することをお勧めいたします。

対象の考え方(算定要点)/詳細は告示・通知・様式の最新版で確認するようにしてください。

・「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の算定見込み額 ÷ 給与総額(月平均)<1.2% が前提
  (届出様式上で機械計算)
・常勤換算2名以上が原則(ただし医療資源の少ない地域などの特例あり)
・入院機能を持つ医療機関は基本「入院ベースアップ評価料」を検討する
  (ただし直近3カ月の延べ入院患者数が30人未満の有床診は「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」 
  の届出可)
・評価料(Ⅰ)を届出済みであることが前提(評価料(Ⅱ)単独は不可)

入院ベースアップ評価料との関係

病床を有する医療機関は、「入院ベースアップ評価料」の見直しがより大きいインパクトに繋がると思います。R9.6以降は最大点数が日額500点へ拡大する段階設計が示されています。
但し、何度も言うようですが、詳細は告示・通知等で確認するようにしましょう。

まとめ~物価高騰と賃上げを「制度として支える」初めての改定~

令和8年度診療報酬改定は、中医協が R8.2.13 で答申したように、物価高騰と医療従事者の賃上げという社会的課題を真正面から扱った改定 だと思います。

物価高騰対策では、初・再診料や入院基本料の底上げに加え、令和8年度・令和9年度の2年間限定で「物価対応料」が新設されました。この加算は、物価高騰によって増大した医療機関への緊急的な対応措置として位置づけられています。現時点では、令和10年度(次回改定)以降の取り扱いについては明確に示されていません。中医協答申の付帯意見でも、「令和9年度の物価動向を踏まえて検討する」とされており、継続・終了・再設計のいずれの可能性も残されています。
したがって、医療機関としては「物価対応料を算定しつつ、この2年間で経費構造を見直す」ことが重要な経営課題になると考えられます。特に光熱費・委託費・医療材料費の高止まりが続く中で、暫定的な収入増に依存しすぎず、持続可能な原価構造を再構築することが求められていると言えるでしょう。

一方、外来ベースアップ評価料では、賃上げを“やれば点数が上がる/しなければ減算”という形で実効性を担保する仕組みになっています。R9.6以降はさらにその差が開く設計で、人材確保のための処遇改善を経営の中核課題に引き上げられているように思います。
これは、“地域医療を持続させるには人材確保が最優先”という国の方向性を明確に表しているのではないでしょうか。

当面の実務課題としては、

 ・賃上げ計画の策定・届出(Ⅰ→必要に応じ(Ⅱ))
 ・物価対応料の運用整備(R9.6の倍増も見据えて)
 ・外来・在宅・入院を分けた人件費と経営KPIの見直し

単なる点数の増減ではなく、「経営の再設計」と「処遇改善の具体化」を迫られているように感じます。地域医療構想/地域包括ケアの中で自院の機能を再定義しつつ、持続可能な原価構造と人材戦略を同時に進めることが、これからの大きな課題になるのではないでしょうか。

※参考資料 (令和8年2月14日確認)

〇厚生労働省/中医協総会「個別改定項目について」令和8年2月13日中医協総会

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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