【令和2年度診療報酬改定】人工腎臓について

長 幸美

アドバイザリー

透析医療については、今回も、透析技術料の見直し、腹膜透析を実施している患者の人工透析の見直し、バスキュラーアクセスにかかる処置の見直し、持続緩徐式血液濾過の評価の見直し、等が行われました。
いわゆる見直しですので、全般的に、点数が下がりました。詳細な点数の変化については、個々では触れませんが、関連の医療機関は必ず、「告示・通知」で確認をするようにしてください。

今回ここで、注目してほしいのは、腎代替療法指導管理料 500点」の新設と、「人工腎臓導入期加算」の評価の見直しです。
ここに、「腎代替療法」として腎移植に向けた情報提供や手続きを行っている実績が、この評価の中に入ってきたということです。

移植を含めた腎代替療法情報提供の評価
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「技術的事項」より)

腎代替療法」とは、腎臓の通常の血液濾過機能を何らかの形に「置き換える」治療法です。腎臓がうまく機能していなくなった場合に導入される「透析」が代表格だと思います。この中には、透析だけではなく、腹膜透析(腹膜灌流)、腎移植も含まれ透析開始前の段階から、これらの代替療法について、説明を行い、治療の選択をしていくこと、さらに腎移植を推進する働きかけが求められているようにも見えます。

腎代替療法指導管理料(500点、1患者2回)」については、スライド資料にもあるように、関連学会策定の「腎不全 治療選択とその実際」を参考に、腎代替療法」がどのようなものかをしっかりと説明することが求められています。
施設基準では、「導入期加算の2」の施設基準に準じていることが必要で、人員配置としては、以下の職種が連携して診療を行う体制があることとされています。
① 腎臓内科の診療に従事した経験3年以上の専任の常勤医師
② 5年以上看護師として医療に従事し、腎臓病患者の看護について3年以上の経験を有する専任の常勤看護師

では、「導入期加算2」の基準はどのようなものでしょうか?
ア 導入期加算1の施設基準を満たしていること
在宅自己腹膜灌流指導管理料を過去1年 間で 12 回以上算定していること
ウ 腎移植について、腎移植に向けた手続きを行った患者が前年に3人以上いること

アの「導入期加算1」については、腎代替療法の十分な説明を行っていることが要件になっていますので、この「説明」に加えて、腹膜灌流や腎移植に向けた手続き等の実績が必要になってくるということになります。

今回の透析関連の改定では、唯一評価が上がったところではありますが、実際に腹膜灌流の患者が1人以上、腎移植に向けた手続きを行った患者が年3人以上というハードルは高いのではないかと思います。透析も腎代替療法の一つですが、いかにして日常的に制約を受けない治療法に取り組めるかを考える必要がありそうです。

<参考資料>
〇厚労省:令和2年度診療報酬改定説明会資料等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html
※「10技術的事項」をご参照ください。

〇厚労省:令和2年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00027.html
※「告示」「通知」をご確認ください。

〇厚労省:疑義解釈(その1)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000615888.pdf
※p.医科18~19_問71~73をご参照ください。

医業経営支援課

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