佐々木総研40周年記念対談
2012年、当社創業40周年を記念し、主に北九州を拠点にご活躍中で、地域のための活動を精力的になされている企業経営者、大学教授の方々にお集まりいただきました。「これからの経営に必要なこと」と題して、地域社会と企業とのかかわりや、地域活性化の方法について対談していただいております。ここでは、その内容を掲載いたします。
※肩書きは2012年9月時点。敬称略。
現在、日本の消費額の半分以上は50歳以上の人達によるものだといわれています。
この比率は今後も増えていくでしょうし、特に北九州は政令指定都市の中でも高齢化率が高く、65歳以上の層が既に23%を占めています。
企業経営や生活文化のあり方も含め、北九州は世界でも高齢化社会の最先端のモデル地区になり得るのですが、私は、地域社会のあり方を見直すことが必要ではないかと思っています。
地域の中で企業が果たすべき役割などについて、ご意見をお願いします。
日本の医療費は現在GDPの8.5%強ですが、欧米では15%に達する国がいくつもあります。
医療費をそれだけ使っても成り立っている国があるのはなぜかと考えると、300年前の家に住んでいたり、2000年前の下水道がまだ使えたり、といったストックの豊かさなのですね。親から持ち家を貰った人は、可処分所得が少なくても食べていけるのと同じです。
ですから今後の人口減少や高齢化を考えると、この時期にやっておくべきことの1つにストック化があげられます。小売業では店舗が1つのストックです。
スクラップアンドビルドではなく、人口減少の中で店舗を20年後も活かすためにはどうしたらいいかと考えると、「店はものを売るだけではなくコミュニティの中心になるのだ」という発想が絶対に必要だと思います。
例えば何かをしたい人に店舗内で教室を開いてもらうなど、地域の人々に我々が場を提供することで、コストをかけずに地域を活性化できます。
また、ある店舗では64歳から72歳の高齢者10人ほどが喜んで働いてくれていますが、高齢でも社会に参画し、福祉の対象と思われている人が自らお金を稼ぐ場を提供して、我々のビジネスそのものを社会資本にしていくこともできます。
世の中の役に立つことをやろうとする人々を活かし、経営としてどう成り立たせるかを我々は考えればいい。そのためのいろんなネットワークを組んでいけるといいのかなと思います。
イタリアなどの欧州は経済危機で大変に見えますが、実は行き倒れることはなく、教会の前に倒れていたら必ず助かるという二重構造があります。
しかし日本には、江戸時代なら駆け込み寺がありましたが今はありません。
生活保護は国がやるべきと考えますが、そろそろ企業やNPOなども含めた地域におけるセーフティネットも必要ではないでしょうか。
昨年私は「1%クラブ」を呼びかけました。これは、企業や団体それぞれが1%だけ、例えばお金がある人は利益の1%を寄付する、お金がなくても365日あれば、そのうちの2日か3日くらいを他の人のために使う、といった動きができないかと20年ほど構想しています。
「多くの力を繋げて幸せに生きる形を作れないか」と思っているのですよ。
我々も地域で仕事をさせてもらっているので、責任はありますよね。
先週、八幡東区大蔵で新店舗がオープンしましたが、この辺りには65歳以上の人がいる家庭が60%、65歳以上の単身世帯が30%もあります。
そうすると徒歩しか移動手段がない方もいて、「野菜と惣菜だけはなんとかして欲しい」という地元の要望があったので、このドラッグストアの店内には八百屋と弁当惣菜屋がテナントで入っています。通常はありえないことで、我々がやりたいわけでもないのですが、地域に必要なのですよ。
まず何が必要で、それをどうやったら実現できるか、というところを突き詰めていきたいと思います。