佐々木総研40周年記念対談
2012年、当社創業40周年を記念し、主に北九州を拠点にご活躍中で、地域のための活動を精力的になされている企業経営者、大学教授の方々にお集まりいただきました。「これからの経営に必要なこと」と題して、地域社会と企業とのかかわりや、地域活性化の方法について対談していただいております。ここでは、その内容を掲載いたします。
※肩書きは2012年9月時点。敬称略。
1900年以降、日本では年間約80万人ずつ人口が増えてきましたが、今回は初めての人口減少という局面を迎えています。
特に団塊世代が75歳以上を迎える2025年以降は年間約80万人ずつ人口が減ると予想され、このスピードはもっと速くなるかもしれません。
財政赤字もGDP比で200%を超え、相当大きな転換をしないとこの国の経営は持たないのではないかと危惧しています。
今後の企業経営モデルを考えるにあたり、忌憚のないご意見を伺いたいと思います。
ある日本のトイレタリーメーカーの社長から伺ったのですが、自社は生き残る自信があるけれども、人口も消費も減る日本で最後のトイレタリーメーカーとして残っても、企業は縮小せざるを得ず、幸せとは言えない、ということでした。
日本の小売業は従来、規模の拡大を追求してきました。確かにある時点までは、ユニットを拡大して原価を低減することができますが、あるレベルまでくると下げることは不可能になります。
しかし、文化や嗜好と結びついている化粧品などは、人口が減ってもニーズに対応した市場創造も可能となります。この時、個別の消費者にどうすれば買ってもらえるかというストーリーを作ることができるのは、お客様と接点を持ち、何を伝えたら良いか判断する能力を持つ販売担当者の存在なのです。
今後はお客様のことを知り、お客様とコミュニケーションがとれる、そういう企業でなければ幸せにはなれないと思います。
当社は現在、グループを含めて800億円ほどの売上規模ですが、様々な他企業から「一緒に商品を開発して大量生産し、安価で販売しないか」というお声がけをいただきます。
自社で独自に開発した商品もありますので、原価や物流費などを調べて、どちらがベターか比較検討したところ、コストは確かに他社との共同開発の方が幾分安くできますが、商品の粗利から考えると自社開発商品の方が良いのです。というのも、よそが開発した商品を売るよりも、自分たちで苦労の末開発し、ハローデイマークが入った自社商品は、「この商品を売るぞ」という従業員の思いが強く、実際によく売れるのです。
やはり「自分たちが作っているんだ、そしてこれをお客様にこう薦めるんだ」という従業員の熱い思いが、一番大切なのではないかと思います。
日産のカルロス・ゴーン社長について、私が一番印象に残っているのは彼の動きです。彼は多忙な中でも数多くの販売店へ直接出向き、現場の人間にどんどん会っています。
一方、日本の企業はどうでしょう。
現場と乖離したトップには、濾過された情報しか上がってきません。
決定権を持つ人間が現場の情報を知らないために、日本企業は世界に遅れ、硬直化していると感じますが、現場を見る力や現場から情報を吸い上げる感性を持った経営者も求められているのではないでしょうか?
そうですね。
現場に即応できるリーダーが必要なのと同時に、お客様のニーズを的確に捉えて対応できる従業員を育て、その力を組織的に継続して発揮できるような会社の仕組みを作っていくことが重要だと思います。
当社では、パートナー(従業員)さん達が楽しく仕事ができる環境を大切にしています。
彼女達に裁量権を与えると、「どうしたらお客様に喜んでもらえるか」という目線で一生懸命に考えます。
昔の経営者は直接お客様と対面していましたが、会社が成長し組織化するにつれ、トップは直接お客様と接する機会がなくなります。
それならば、お客様に接するパートナーさん達にも自分と同じように動いてもらえるよう、個々の力が発揮できる仕組みづくりが必要だと思いますね。
当社では全店長を集める営業会議の際に表彰式を行い、その内容を全店に配信しています。
例えばある店で化粧品がよく売れたのは、「パートさんががんばって作ったPOPのおかげ」であれば、いかにPOPが素晴らしかったのかを説明する「オリジナルの表彰状」を店長自らが作成し、それを社長が表彰します。
大きな拍手を受けてパートさん達は喜び、自分たちの良さを見つけて褒めてくれた店長へ感激しますし、店長も感謝されて嬉しくなり、パートさん達のいいところをもっと見つけて伸ばそうという動機づけもできるなど、いい仕組みができています。