【医療・介護あれこれ】保険外サービスについて

長 幸美

アドバイザリー

今回は、保険外サービスについて取り上げていこうと思います。

社会保障費の増大に伴い入院から在宅へ、地域医療構想において地域包括ケアシステムを実現するべく、議論が重ねられていますが、今回は、国が今何を考え、どのようなことに問題があるのかを考えてみたいと思います。

超高齢化社会になり、ますます社会保障費も増大の傾向にあります。アベノミクス第二ステージに入り、社会保障費の中で一番ウエイトを占めている医療制度と介護保険制度のあり方が検討されていることは、皆さんよくご存じのとおりです。

これらの根底には2025の人口問題があります。いわゆる団塊の世代が75歳以上になる時期をさしますが、そのころには3人に1人は後期高齢者になるといわれています。また、内閣府が発表した認知症の推計者は700万人を超え、ある調査では85歳以上の方の2人に1人は認知症を発症するといわれています。

では、医療機関として、何が求められてくるでしょうか?

病院では、専門的な診断・治療の技術のほかに、肺炎や廃用症候群、認知症に対して、リスク管理をしていくことが求められてくるでしょう。

そうすると何が起こってくるのか?・・・急性期の病院であっても認知症や精神疾患等に対する在宅医療を主にする診療所(クリニック)では、慢性疾患に対する服薬管理だけではなく、健康管理や栄養管理も必要になるでしょう。また、増加してくると思われる認知症の対策をどのようにしていくかも課題になります。

これらは地域に一番近い医療機関である主治医の重要な役割になると考えられています。

また、山間部を中心に過疎化が進み、核家族が増えていく中では「おひとり様」や「遠隔介護」「老老介護」が増えています。その方々をどう支えるか?・・・どうやって生活を守るかを考えなければならないのです。在宅での生活は、訪問介護・看護、デイサービス等の介護保険サービスを利用しなければありえないのが現状です。

では、介護サービスを受けることで十分に安心して生活することが可能でしょうか?

在宅に移行しても介護保険の範囲内で十分なサービスを受けられるかというと、実際にはそうではないような現状もあるようです。

今年の介護保険の改定で「中重度者を対象にしたサービス」に重点をおいた改定が行われ、軽症者・・・つまり、要支援認定を受けている方の生活支援のための訪問介護やデイサービスが生活支援総合事業に移行されることが決められています。しかし、要支援状態であっても、その方の置かれている状況によっては『自宅で、一人で暮らし続ける』ためには様々な支援が必要になってくると思われます。このため、軽度者が日常生活を支障なく送るためには、『保険外サービス』を充実させることが必要になってきます。
これは『地域包括ケアシステム』の中の『互助』の機能を充実させることです。

保険外サービスで重要なことは、『地域のニーズをどう把握するか』、『持続可能な料金設定であるか?』ということだと思います。高額なサービスでは続けていくことはできません。また、無料サービスやボランティアばかりでは気兼ねしてしまい利用し辛いということもお聞きします。おいくら位が適切な金額か、どこまでを『保険外サービス』で実施していくのか?ということを決めていくのは非常に難しいことですが、それぞれの事業所の立ち位置や地域の方々のニーズで、変わってくるようです。

実際に行われているサービスでどのようなニーズがあるのか、少し紹介したいと思います。

【外出がしたい】
・外食に行きたい。
・旅行に行きたい。
・お墓参りに行きたい。
・映画を観に行きたい。音楽会(コンサート)に行きたい。
・日頃のお散歩だけではなく、少し遠くに行きたい。

【認知症の見守り】
・家族が不在の時に見守りしてほしい。一緒にお留守番してくれないかしら・・・
・徘徊する高齢者を見守ってほしい。
・話し相手がほしい、でもデイケアに行くのはいや。
・認知症カフェ
・最近、家族の様子が変だが、どうしたらいいのかわからない、誰かに相談したい。
・徘徊する高齢者を地域の中でどう守っていくのか?
・何もする気が起らない。

【5分間サービス】
・電球が切れたので換えてほしい。
・高いところのものを取ってほしい。
・ブレーカーが落ちてしまったけれど、届かないわ。
・ゴミ出しが大変
・回覧板がきたけれど・・・お隣にもって行くのが大変だわ・・・

【住まい】
・家に一人でいるのは不安・寂しい。(本人)
・一人で留守番させるのは不安。(家族)
・子供たちも独立して、広い家は掃除が大変だわ!
・町内の行事に参加できない。
・一人暮らしが不安で、高齢者住宅に入居したけれど、何もすることがなくて時間を持て余してしまう・・・お友達もいないし・・・
・家の中が片付けられない。
・季節物の整理や出し替えが大変だわ。

【食事・服薬】
・毎日、自分のためだけに食事を作るのは面倒だわ・・・
・お買い物にも行かなければならないし・・・
・お薬を飲むためには食事をしなければならないけれど、今日は食べてないから飲まなくても大丈夫かしら。
・内服薬の種類が多くて、時々飲むのをわすれるのよね。

【人材育成】
・ボランティアとして参加してくださる方へのサポート
・認知症カフェ
・介護職の方のサービス向上のための研修会を実施・・・(介護事業所で、自医療機関で)

さあ・・・如何でしょうか?

これらのニーズは、実際に介護事業者の方やケアマネージャーさんからお聞きしたことがあります。医療保険や介護保険の中では限界があります。

これらのニーズに応えることは保険の中では困難なことも多いのではないかと思います。
皆さんの医療機関や事業所の中でできる『保険外サービス』を考えてみませんか?

次回は、『生活支援総合事業』について考えてみたいと思います。

 経営コンサルティング部
経営支援課

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