令和8年度診療報酬改定速報~オンライン診療・D to P with N は在宅医療の中核となるか
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
令和8(2026)年度診療報酬改定は、点数の上げ・下げだけの改定ではありません。
この改定の内容を見ていくとオンライン診療の「制度そのもの」を再設計され、在宅医療の形を変える改定になっているようです。
もっと広い視点で捉えると、「地域に生活する方々を医療面でどのように支えていくか」、
それぞれの医療機関がどのように役割分担していくか・・・という医療提供体制そのものの再構築が
求められていると言えます。
本稿では、まず医療法改正によるオンライン診療のルール変更を「前提」として整理し、その上で診療報酬の見直し(D to P with N の本格評価、訪問看護との同時実施、D to P with D の拡充など)が何をもたらすのかを整理していきたいと思います。
目次
前提:医療法の改正によるオンライン診療の位置づけ
令和7年に医療法の改正で、「高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、地域医療構想の見直し等、医師偏在是正に向けた総合的な対策の実施、これらの基盤となる医療DXの推進のために必要な措置を講ずる」ことを目的に仕組みの見直しが行われました。
つまり、従来の「在宅=医師の訪問が大前提」という設計を改め、患者側には看護師が同席し、医師は遠隔で診療(手技指示を含む)を完結できる――という「オンライン診療の再設計」が新たに出てきました。この改正を受けて何が変わるか? 内容を整理してみましょう!
オンライン診療受診施設の創設
公民館・郵便局・駅ナカ・薬局等が、医療機関と連携してオンライン診療を受ける正式な“場所”として法的に位置づけられました。これにより、医療機関外でも、看護師同席型のオンライン診療(D to P with N)を安全に実施する制度的基盤が整ったことになります。
言い換えると、「医師が必ず来なければ診療ができない」状況から、「看護師が現場に入り、医師は遠隔で診療を前に進める」ことができることになり、受診の“前提”そのものが更新された、ということになります。
D to P with N(医師×看護師同席診療)の明確化
D to P with Nの場合、医師は医療機関に居たままオンラインで診療を行います。
患者さんのそばに看護師が同席し、医師の指示のもと採血・注射・検査・処置等の手技を行うことができます。この行為が制度上明確化され、可能となりました。想定外の症状にも、医師がオンラインで診察し指示書や計画の更新で対応可能であると整理されています。
つまり、これが「医師の訪問を前提にしない新しい在宅診療モデル」であり、法改正で「設計変更」の根拠、今回の診療報酬が「実装の評価」を担う――という二段構えになっているといえます。
書類の簡素化と責任の所在
訪問看護指示書があれば、重複して診療計画書を求めない方向が示され、現場の事務負担が軽減します。医療行為の責任はオンライン診療を行う医師・医療機関側であり、受診施設(公民館等)は“場所提供”にとどまる点が明確化されました。
受診施設に関しても施設基準があり、あらかじめ届出し、承認を受けることになると思いますが、その詳細については、今回は割愛したいと思います(後日改めて整理できればと思います)。
今回のコラムで紹介する「看護師等遠隔診療検査実施料(検査・処置・注射)」や、訪問看護×オンライン診療の同時実施の明確化は、上記の医療法改正の整理があって始めて成立するものです。
2026年改定が「点数改定」ではなく「医療提供モデルの転換」であるという考えられる所以です。
「在宅=医師が行くもの」という固定観念を外し、看護師が現場で手技・観察し、医師は遠隔で診断・指示・処方を行う、患者の居場所は自宅やオンライン受診施設・・・という役割分担の再定義が、今回のメッセージになるでしょう。
1. 医療DXは「導入」から「運用」へ~オンライン診療の質担保と情報連携の必須化
令和8(2026)年度は、オンライン診療の施設基準が厳格化されています。
その内容としては、
・自院サイトでオンライン診療指針チェックリストを掲示すること、
・医療広告ガイドラインを遵守すること、
・向精神薬処方時の電子処方箋での重複投薬チェックを行うこと、等が要件化されました。
さらに、医療DX関連は「導入支援」から「実運用評価」へ移行してきています。これは、加算の再編により、「医療情報電子的診療情報連携体制整備加算」に統合され、「導入しているか」ではなく「活用できているか」が評価軸となりました。
つまり、医療DXは運用フェーズに入ったと言えるのではないでしょうか。
2.D to P with N を「診療」として評価~看護師等遠隔診療の検査・処置・注射
前提でお話しした通り、医療法改正により、「オンライン診療受診施設」が創設され、公民館・郵便局・駅ナカブースなどの医療機関外でオンライン診療を受ける仕組みが正式化されました。
ここで行われる診療の中心となるのが D to P with N (Doctor to Patient with Nurse)です。
D to P with Nでは、医師は遠隔地からオンラインで診察し、患者のそばに看護師が同席する。
従来のD to P(1対1オンライン)の課題だった「視診に限られる」「高齢患者がデバイス操作できない」といった制約を、看護師の存在が補完することで問題を回避できることになります。
さらに、2026年からは、看護師が医師の指示のもとで、以下の医療行為等が行えることになります。
・採血
・注射
・処置
・各種検査
この制度上の明確化により、オンライン診療は「実際に医療行為を伴う診療」へと領域を広げることが可能となります。
新設:看護師等遠隔診療検査実施料 ・処置実施料・注射実施料
手技を伴うオンライン診療の本格評価として、今回の改定の中でも象徴的なのが、この「看護師等遠隔診療検査実施料・処置実施料・注射実施料 」です。
【第3部 検査】 [算定要件] 通則 1~6 (略)
厚生労働省/中医協(総-1)「個別改定項目について_530p~」(R8.2.13)
通則7 看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行った場合であって、第3節又は
第4節に掲げる検査を実施した場合は、看護師等遠隔診療検査実施料として、第3節又は第4節の
各区分の所定点数に代えて、次に掲げる区分に従い、1日につき、いずれかを算定する。
イ 1種類の場合 100点
ロ 2種類以上の場合 150点
【第6部 注射】 [算定要件] 通則1~9 (略)
通則10 看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行った場合であって、第1節に掲げ
る注射を実施した場合は、看護師等遠隔診療注射実施料として、第1節の各区分の所定点数に代え
て、1日につき、100点を算定する。
ただし、第9部通則第9号に規定する看護師等遠隔診療処置実施料のロを算定する場合は算定しな
い。なお、当該実施料を算定した場合には、区分番号C005-2に掲げる在宅患者訪問点滴注射
指導管理料は別に算定できない。
【第9部 処置】 [算定要件] 通則 1~8 (略)
通則9 看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行った場合であって、第1節に掲げ
る処置を実施した場合は、看護師等遠隔診療処置実施料として、第1節の各区分の所定点数に代え
て、次に掲げる区分に従い、1日につき、いずれかを算定する。
イ 1種類の場合 100点
ロ 2種類以上の場合 150点
これらは、看護師が患者サイドで指示を受けながら手技を行うことを前提とした評価体系であり、従来の「オンライン診療はあくまで視診中心」という発想を一段階超えるものとなっています。
在宅医療における「医師の移動時間」という最大の制約を、看護師が現場に入りオンラインで医師が指示することで克服することができると思います。
この診療報酬上の評価が付いたことは、大きな変化になるでしょう。
訪問看護とオンライン診療の同時実施 ― 在宅医療チームの動線が変わる
今回、実務に大きく影響するもう一つのポイントが、訪問看護中にオンライン診療を行った場合の併算定が可能になったという明確化です。
【C005 在宅患者訪問看護・指導料、C005-1-2 同一建物居住者訪問看護・指導料】
厚生労働省/中医協(総-1)「個別改定項目について_526p~」(R8.2.13)
算定要件(通知) (1)~(35) (略)
(36) 訪問看護・指導の実施時に当該保険医療機関の保険医が情報通信機器を用いた診療を実施した場合に、C005及びC0051-2は算定できる。なお、この場合においても、訪問看護・指導の実施時間は十分に確保すること。
従来は「同一日に看護師と医師が診療と看護を行う場合に算定がどうなるか」という議論があり、訪問看護を算定するか、訪問診療を算定するか・・・のような話がありましたが、それが少し変化し医療行為の算定も行える点はよかったのではないでしょうか。
また、訪問看護を同時に実施しない場合であって、保健師、助産師、看護師又は准看護師(以下「看護師等」という。)が患家に訪問する場合の訪問及び診療の補助に係る評価も新設されました。
(新)C005-1-3 訪問看護遠隔診療補助料(1日につき) 265点
訪問看護ステーションの場合は、
(新)07 訪問看護遠隔診療補助料(1日につき) 2,650 円
これは定期的な訪問看護外で緊急に訪問診療の必要があり、その支援のために訪問看護師が患者さん宅を訪問して診療支援をする場合に月に1回に限り算定できるものとされています。
これは医師又は看護師の配置義務がある施設入所者に対しては、適応されません。
これにより、「看護師訪問+オンライン診療」=通常の在宅医療の1つの標準形として運用できるようになります。
オンライン診療の標準化 → 在宅医療の中核へ
2026年改定では、D to P with N だけでなく、医療機関同士が連携して診療する D to P with D(遠隔連携診療料) も対象疾患が大幅に拡大され、外来・在宅・入院の全領域で運用可能となりました。
つまり、オンライン診療は
- 患者・看護師と医師をつなぐ(D to P with N)
- 主治医と専門医をつなぐ(D to P with D)
- 医療機関間の情報をつなぐ(DX加算の運用期)
という三層構造で標準化していく。
中でも在宅医療にとって重要なのは、“医師が訪問する診療に頼り切らない” 新しい診療フローが制度として認められた点ではないかと思います。
医師不足や広域エリアの課題を抱える地域では、看護師訪問とオンライン診療の組み合わせが、医療アクセスの改善に直結します。高齢者が増え自宅療養が一般化する中、D to P with N は在宅医療の中核的サービスとして成長する可能性が高いものと思われます。
まとめ ~「訪問医療」から「チームで支える在宅医療」へ
2026年改定が示した方向性は明確です。
オンライン診療は「例外的な診療の補助手段」という位置づけではなく、在宅医療の一部として制度に組み込まれた中核機能であると評価されています。
特に、D to P with N の評価整備と手技の実施料の新設は、医師がすべて訪問するモデルから
医師+看護師のチームで在宅での生活を支えるモデルへと移行する大きな転換点となるでしょう。
在宅医療に関わる医療機関・訪問看護ステーションは、この新制度をどのように取り込み、どの患者を対象にし、どのような運用フローを構築するかが問われてくることになると思います。
医師不足が深刻な場所においても、介護保険のサービスは深く浸透してきています。身近な介護サービスの中に看護師が存在するのであれば、オンライン診療を行うことで無理な移動を双方で(医師と患者)で行うことが避けられます。この点において令和8(2026)年は、在宅医療におけるオンライン診療元年と言えるかもしれません。
改定に向けて自院ではどう活用し、どの患者層に適用するのか?協議していくべきでしょう。
6月の実施に向かいこれからの在宅医療経営の重要なテーマとして、検討してみてください。
<参考資料> 令和8年3月1日確認
◆厚生労働省/中医協(総-1)「個別改定項目について」(令和8年2月13日開催)
※ D to P with N のオンライン診療の評価の明確化 ・・・526p~
◆厚生労働省/社会保障審議会医療部会資料1「オンライン診療について」(令和8年1月26日開催)
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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