知っておきたい「障害者総合支援法」あれこれ②~医療費障害者医療費助成制度のあれこれ~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

前回は、「重度障がい者医療費助成制度」の背景となる「障がい者自立支援法」や制度の概要についてお話ししました。
 ※「障害者総合支援法あれこれ①については(こちら)をご覧ください。

今回は、実際に制度を利用するための対象者の基準や申請の流れ、そして混同されやすい「自立支援医療制度」との違いについて整理します。

重度障がい者医療費助成制度の受給要件

医療費助成制度の対象者

この制度は、市区町村が独自に実施するもので、対象者の基準は自治体ごとに若干異なりますが、一般的には以下のいずれかに該当します。

①身体障害者手帳 1級または2級所持者
②療育手帳(知的障がい)A判定
③精神障害者保健福祉手帳 1級所持者
④その他、特定疾患・難病等で重度障害と認められる方(自治体基準による)

 ※自治体により対象基準や認定方法が異なるため、必ず該当自治体の要項を確認しましょう。

所得制限

多くの自治体で所得制限が設けられています。
この場合、前年(または前々年)の課税所得をもとに、本人・配偶者・扶養義務者の所得で判定します。制限額を超えると対象外、または一部自己負担となる場合があります
障がい児の場合は、保護者の所得で判定されるのが一般的です

申請の流れ(一般的な例)

重度障がい者医療費助成制度を利用するためには、まずは、上記①②③④の申請を行い、
市区町村の福祉課・障害福祉窓口で本人若しくはご家族の方が申請する必要があります。

①必要書類の提出
 ・障がい者手帳(①②③④または申請書+医師の診断書)
 ・所得証明書(課税証明書)
 ・健康保険証

②審査後、「重度障がい者医療証(医療証)」が交付される

取得した医療証をマイナ保険証(保険資格確認書)と医療証を合せて提示することにより、助成制度を受けることができます。

窓口対応のポイント

医療機関の窓口では、「マイナ保険証又は保険資格確認書」により保険資格の確認をすると同時に、行政窓口で発行された「重度障がい者医療証」の有効期限、一部負担金の有無、対象外項目(入院食事療養費など)を必ず確認します。一部負担金については、負担区分が何になるのかを確認する必要があります。

また、年に1回更新する必要がありますので、更新時期の前月には「期限が近付いていることの案内」を行うとトラブル防止になります。

自立支援医療制度とは?

自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
「重度障がい者医療費助成制度」と混同されやすいのですが、これは、重度障がい者医療制度と違い、それぞれに「指定医療機関」の指定を受けた医療機関で「対象疾患」に対し提供された医療についてのみ、医療費が軽減される制度です。
この制度には、3種類あり、以下の通りです。

①精神通院医療(21)

 精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者が対象とされ、精神疾患に対する通院治療(向精神薬の投薬・精神科デイケア等)が対象となります。

②更生医療(15)

身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)が対象とされています。
例えば:人工関節置換術、心臓手術、補装具作成等
 ア.肢体不自由・・・関節拘縮に対する「人工関節置換術」
 イ.視覚障害・・・白内障に対する「水晶体摘出術」
 ウ.内部障害・・・心臓機能障害に対する「弁置換術」「ペースメーカー埋込術」、
          腎臓機能障害に対する「腎移植」や「人工透析」  /等です

③育成医療(16)

身体に障害を有する児童(18歳未満)で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者が対象とされています。
例えば:将来の障害軽減・回復を目的とする医療等が対象になります。
 ・先天性心疾患の手術、口唇口蓋裂の手術、等です。

医療費助成制度との違い

項目 自立支援医療制度 重度障がい者医療費助成制度
実施主体 国(市区町村が窓口) 市区町村(自治体独自)
助成対象 医療の種類ごと(3種類) 健康保険診療の自己負担分
判定基準 医療内容と必要性 障害の程度や所得
財源 国・都道府県・市区町村 自治体

まとめると・・・
自立支援医療は「どんな医療を必要とするか」で対象が決まる制度、そして重度障がい者医療費助成は「どんな障害で支援が必要か」で対象が決まる制度、といえるかもしれません。

現場での注意点

公費併用レセプトでは、自立支援医療・難病医療など他制度との併用可否を確認する必要があります。
医療証を忘れた場合は、いったん通常の保険診療として請求し、一部負担金を払ってもらい、後日医療証の提示を受けたうえで、差額の返金ができることを案内することも必要でしょう。
また、診断書作成に当たっては、制度や申請先を確認して担当医に正確に伝えることも必要です。

おわりに

この2つの制度は目的や仕組みが異なりますが、患者さんにとっては「医療費を軽くしてくれる制度」という点で同じです。この為、保険請求時には考えがごちゃ混ぜになってしまう可能性や混乱してしまうこともあります。
公費の優先順位等、レセプト作成上の公費選択の優先順位も違っていますので、しっかりと理解することが必要です。
あわせて窓口ではそれぞれの公費について違いを理解したうえで、正しい情報提供とスムーズな案内を心がけましょう。

次回は、障害認定によって広がる生活支援や障害年金など、医療費助成以外の受給メリットについてお話しします。

<参考資料>  令和7年8月12日確認

■厚生労働省/自立支援医療制度の概要は (こちら)

■保険者番号、公費負担者番号、 公費負担医療の受給者番号並びに医療機関コード及 び薬局コード設定要領 ⇒ (こちら)
  ※公費負担医療にかかる「レセプトの作成要領」です。ぜひご確認ください。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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