【令和2年度診療報酬改定】地域連携~診療情報提供書について~

長 幸美

アドバイザリー

今回の改定では、随所に「連携」という言葉が出てきます。
例えば、厚労省の改定概要の二つ目の視点には、「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」とあり、かかりつけ機能の評価や情報提供、相談支援、治療と仕事の両立など、生活を配慮した項目が上がっています。

令和2年度資料報酬改定の基本方針(概要)(出典:令和2年度診療報酬改定の概要(令和2年3月5日版)より)

一人の患者について、1人の医師が責任を持つのではなく、それぞれの得意分野を生かしてみんなで支えていきましょう、というメッセージが、様々なところにちりばめられていると思います。その一つが「診療情報提供書料」になるのではないでしょうか。この改定の項目を中心に見ていきましょう。

【診療情報提供書料(Ⅰ)】
診療を行う上で、医師が必要であると判断した場合には、他の専門医等に患者さんを紹介し、診療を依頼します。この時に患者さんの状態やどのような目的でお願いしたいのか、記載して情報提供するものが診療情報提供書です。いわゆる「紹介状」といわれるものです。

かかりつけ医機能にかかる評価の充実(出典:令和2年度診療報酬改定の概要(令和2年3月5日版)より)

この図の中で、「情報共有・連携」と書かれているところで、この「診療情報提供書」を作成しますが、令和2年診療報酬改定では、保険請求できるものが増えました。

◆電話再診時の診療情報提供書
夜間や休日等、電話で相談された場合などはとくに、「急性期の病院に行くほうが良い!」と判断され、ファックスで診療情報提供書を送られる場合など多いのではないでしょうか? この場合、電話で病状を聞き、治療上の必要から、休日または夜間における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる医療機関への受診を指示したうえで、情報提供書をファクス又はメールで送付した場合に、診療情報提供書料(Ⅰ)の算定が出来るようになりました。
ここで、相手先の医療機関を整理すると、

① 地域医療支援病院
② 救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院又は救急診療所
③ 「救急医療対策の整備事業について」に規定された病院群輪番制病院、病院群輪番制に参加している有床診療所又は共同利用型病院
・・・と記載されています。
先生方の周辺の医療機関で該当するところをピックアップすることが必要ですね。

◆医療ケア児にかかわる主治医と学校医との連携
医療ケア児に関しては、学校生活を送るにあたり、必要な情報を提供した場合に月1回算定できるものとされています。
算定要件など、さらりと書かれていますが、厚労省の資料を参照していただいた方がわかりやすいかと思います。こちらのフローの①主治医からの情報提供の部分にかかる評価です。特別支援学校を含む小・中学校、つまり義務教育期間が対象期間となります。

医療的ケア児にかかわる主治医と学校糸の連携(出典:令和2年度診療報酬改定の概要(令和2年3月5日版)より)

なお、学校医には、学校が医療的ケアの助言・指導を得るために委嘱する医師を含みます。
保健医療機関の主治医と学校医等が同一の場合は算定できません。

【診療情報提供料(Ⅲ)】
かかりつけ医機能を有する医療機関等から紹介された患者に対して、継続的に診療を行っている場合に、かかりつけ医への情報提供について、評価が新設されました。
これは、逆紹介(情報提供)について評価されたものです。
次の図の①③については、地域包括診療加算等を届け出ている医療機関に受診をしている患者の場合になりますから、大病院同士の患者のやり取りではなく、地域のかかりつけ医・・・つまり診療所・200床未満の病院で、次のスライドの右下にかかれている管理料を届け出ている医療機関となります。
③については、産婦人科の患者さんが対象となります。

かかりつけ医と他の医療機関との連携の強化(出典:令和2年度診療報酬改定の概要(令和2年3月5日版)より)

また、算定要件で、「初診料を算定する日を除く」、とありますが、冒頭申し上げた、「継続的に診療を行っている場合」にかかりつけ医への情報提供の評価と考えると、初診に算定ができない理由も分かってくると思います。
算定要件には、次の診療の予約を取っている場合には、初診でも算定可能とありますので、診療報酬を算定する事務職員は、初診時に情報提供書を書かれている場合、次回の予約も確認し、算定することが求められます。
紹介元の医療機関が「かかりつけ機能」を持っているかどうか、どういう施設基準をお持ちの医療機関(クリニック)か、など、チェックしないといけない項目も多くなりますので、事前にリストアップし、運用や算定方法など、確認されることをお勧めします。

【治療と仕事の両立支援】
診療情報提供料ではありませんが、仕事との両立を支援するため、相談支援にかかる評価が組み替えられています。これまで「悪性腫瘍(がん)」患者のみが対象でしたが、今回  「脳血管疾患、肝疾患、指定難病」が追加されました。
さらに、対象者は、産業医が専任されている事業場の就労者だけでしたが、「産業医」「総括安全衛生管理者」「衛生管理者」「安全衛生推進者」「保健師」が選任されている事業場の就労者に拡大されています。
病気になったからといって仕事を辞めてしまうのではなく、治療を配慮しながら働ける環境を整え、働き手を確保する、という意味合いもあるのではないかと思います。
以前は難病の患者さんは特に、「職場には知られたくない」ということをおっしゃる方がありました。このために無理をして、結果入院が度重なり退職するという事例を見てきました。こういった制度を活用し働きながら治療することを支援していくことで、生活が支援できるといいですね。

治療と仕事の両立に向けた支援の充実①(出典:令和2年度診療報酬改定の概要(令和2年3月5日版)より)

また、看護師や社会福祉士が相談支援を行った場合の評価が加わり(相談支援加算 50点)ました。相談支援加算の施設基準として、専任の看護師又は社会福祉士を配置していることと、厚労省が定める両立支援コーディネーター養成のための研修カリキュラムを終了していることが求められています。

<参考資料>
〇厚労省:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdf

〇厚労省:令和2年度診療報酬改定の概要(全体版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000612668.pdf

医業経営支援課

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