【令和2年度診療報酬改定】オンライン診療について

長 幸美

アドバイザリー

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の感染拡大が世間を騒がせていますが、その影響もあり、Web会議(カンファレンス)やオンライン診療が増加するのではないかと、予測しています。
弊社でも、北九州の本社と福岡オフィスがあり、Web会議や研修会などを開催しています。今回の感染対策で、お客様ともWeb会議を開くことになり、思わぬところから、ICTの活用が現実のものとなってきました。医療提供の特性により、現在の保険診療のルールの中では、法的な課題もありすぐには進んでいくことはないと思いますが、今回条件の緩和などにより、オンライン診療をはじめとする「指導管理」「栄養指導」「服薬指導」などの生活習慣や多職種によるカンファレンスなど、Web対応ができるものに関しては、「働き方改革」の観点からも、評価がついてきています。これを機会に検討してみられては如何でしょうか?

それでは本題・・・「オンライン診療」について見ていきましょう!

【情報通信機器を用いた診療にかかる要件の見直し】
情報通信機器を用いて行う診療について、対面診療と組み合わせた活用を適切に推進するという観点から、実施方法や対象疾患にかかる要件等の見直しが行われています。

オンライン診療の実施要件については、事前の対面診療の期間が6か月間必要でしたが、3月に見直し、緊急時の対応については患者が速やかに受診可能な医療機関で対面診療を行えるよう、予め患者に受診可能な医療機関を説明したうえで、診療計画に記載しておくこととされました。
また、オンライン診療料の対象疾患について、定期的に通院が必要な慢性頭痛患者を追加する措置が取られています。

◆オンライン診療料
<算定要件>
・事前診療・・・オンライン診療対象管理料等を初めて算定した月又は慢性頭痛に対する対面診療を始めて行った月から3月以上を経過し、かつ直近の3月間オンライン診療を行う医師と同一の医師により、毎月対面診療を行っている患者に限る。
・対象疾患は、オンライン診療対象管理料等、慢性頭痛
患者の同意を得ること
対面による診療とオンライン診療を組み合わせた診療計画を作成
患者の急変時等の緊急時には患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療を行えるよう、事前に受診可能な医療機関を患者に説明・・・診療計画に記載する
・慢性頭痛に関しては、CT/MRI血液検査等で、一時性頭痛であると診断されていること、病状や治療内容が安定していること、痛みにより日常生活に支障をきたす/など

<施設基準>
・慢性頭痛のオンライン診療・・・研修を受けた医師が1名以上配置
(慢性頭痛のオンライン診療にかかる研修)

事前に対面診療を行うのは、本人確認を行う目的やオンライン診療の説明等にも必要という判断になっています。

◆オンライン医学管理料(100点) ⇒組み換え
⇒医学管理等の通則から、個別のオンライン医学管理を行った場合に算定することと見直されることになりました。

◆特定疾患療養管理料_情報通信機器を用いた場合(100点)
⇒施設基準の届け出を出している保険医療機関において、オンライン診療を行った時に、特定疾患療養管理料を算定すべき医学管理を行った場合は、月1回に限り算定することとなりました。
<施設基準>
・オンライン診療料にかかる届け出を行った保険医療養機関であることとされています。

小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料、生活習慣病管理料及び在宅自己注射指導管理料、についても同様です。

【情報通信機器を用いた診療のより柔軟な活用】
へき地・医療資源が少ない地域に属する保険医療機関において、やむを得ない事情により、二次医療圏内の他の保険医療機関の医師が初診からオンライン診療を行う場合について、オンライン診療料が算定可能となるように見直されました。

やむを得ない事情とは・・・無医地区、準無医地区又は医療資源が少ない地域に属する保険医療機関等であって、医師の急病等により代診が立てられないこと等により患者の診療継続が困難な場合
◆オンライン診療_注3・・・初診時からオンライン診療が可能であることの規定
⇒上記、「やむを得ない事情」に該当する地域かどうか、という判断は、通知等を確認する必要がありそうです。また、代診が立てられない事情がどの程度のものであるかということも、ポイントになりそうです。
⇒また、この場合の「診療情報提供料の算定はできない」というところも注意点になります。

※へき地や医療資源が少ない地域に属する保険医療機関は、二次医療圏内のオンライン診療を行える医療機関を把握しておくことも必要になります。逆に言うと、オンライン診療を行う医療機関は、このような医療資源がすくない地域があるかどうか、そこの先生に、自医療機関の存在をお知らせすることも大事になります。

◆オンライン診療料_算定要件(8) ・・・但し書きの追加
オンライン診療の基本的な考え方の中に「オンライン診療は当該保険医療機関において行う」というルールがありますが、へき地もしくは医療資源が少ない地域に属する保険医療機関又はへき地医療拠点病院において、他の保険医療機関の医師が継続的な対面診療を行っている場合は緩和する措置が取られました。
無医地区、準無医地区若しくは医療資源が少ない地域に属する保険医療機関又はへき地医療拠点病院において、他の保険医療機関の医師が継続的な対面診療を行っている場合は、当該他の保険医療機関内でオンライン診療を行ってもよい。なお、この場合の診療報酬の請求については、無医地区、準無医地区若しくは医療資源が少ない地域に属する保険医療機関又はへき地医療拠点病院において行うこと。

◆オンライン診療による計画的な医学管理を行う医師と同一とされていますが、以下のとおり、チームで行う場合についてルールが決められました。
⇒ただし、在宅診療を行う医師が5人以下のチームで診療を行っている場合であって、あらかじめ診療を行う医師について診療計画に記載し、当該複数医師が診療を行うことについて患者の同意を得ている場合に限り、事前の対面診療を行っていない医師がオンライン診療による医学管理を行っても差し支えない

※あらかじめ診療計画に記載されていない他の傷病に対する診察は対面診療が原則であるとされています。

精神科オンライン在宅管理料についても同様の取扱いです。

【情報通信機器を用いた服薬指導の評価】
医薬品医療機器等法が改正され、情報通信機器を用いた服薬指導(オンライン服薬指導)が対面による服薬指導の例外として認められることなどを踏まえ、診療報酬上の評価を新設されました。
具体的には、外来患者に対する情報通信機器を用いた「服薬指導」について新設されています。

◆薬剤服用歴管理指導料 4 オンライン服薬指導を行った場合 43点(月1回まで)
⇒対象患者は、オンライン診療料に規定する情報機器を用いた診療の実施に伴い処方箋が交付された患者原則3月以内に薬剤服用歴簡易指導料1または2を算定した患者
⇒算定要件・・・①月に1回に限り算定
②オンラインにより薬剤服用歴管理指導料にかかる業務を実施
③医薬品医療機器等法施行規則及び関連通知に沿って実施する
④当該保険薬局内において行う
⑤患者の同意を得る、
⑥対面とオンラインの服薬指導を組み合わせた計画の作成し、
⑦計画に沿って実施する、
⑧担当する者は原則同一者、やむを得ない事情がある場合は2名(指導計画に記載する)
※詳細は告示が出た後、通知で確認すること!

◆在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料 57点(月1回まで)
⇒対象患者は、在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施に伴い処方箋交付された患者。保険薬局において、在宅患者訪問薬剤管理指導料を月1回のみ算定している患者。
⇒算定要件・・・①保険薬剤師1人につき10名/日まで(対面と合わせて40回まで)
※そのほかの要件は「オンライン服薬指導」の場合と同様と考えてよいようです。
※そのほかの施設基準としては、1月あたりの薬剤服用歴管理指導料の4及び
在宅患者オンライン服薬指導料の算定回数の割合が1割以下であること薬剤服用歴管理指導料+在宅患者訪問薬剤管理指導料に対する割合 (在宅患者オンライン服薬指導料を含む)
⇒施設基準・・・薬剤服用歴管理指導料の4にかかる届出

【ニコチン依存症管理料の見直し】
ニコチン依存症管理料について、加熱式たばこの喫煙者を対象とするとともに、対面診療と情報通信機器を用いた診療を組み合わせた診療を評価する。併せて、一連の治療についての評価を新設する

◆ニコチン依存症管理料1
イ 初回                 230点
ロ 2回目から4回目
①対面の場合             184点
②オンライン診療の場合        155点
ハ 5回目                 180点
ニコチン依存症管理料2(一連につき)   800点

算定要件はほぼ変わりませんが、変更点は、1回目から5回目まで、つまりかかわる段階で点数が変わっているということと、2回目から4回目まではオンライン診療でも治療管理はできていくということ。また、加熱式タバコを喫煙している患者についても「禁煙治療のための標準手順書」に沿って禁煙治療が行えるということです。

オンライン診療に関しては、「本人確認」と「いつもの状態」というものが判断しにくいため、対面診療と組み合わせが必要であることには変わりがありません。画面上では顔色一つにしても鮮明ではありませんし、もちろん触診などもできません。しかしながら、働き盛りの生活習慣病や希少性の高い難病など、使い方によっては、かかりつけの患者さんにとっても有効なものになると思います。一度考えてみてもよいのではないでしょうか。

ICTに絡んでは、委員会やカンファレンスなど、ビデオ通話を活用した参加を認める動きがあります。機会は苦手だ・・・ということを言っている場合ではないかもしれません。

<参考資料>
〇オンライン診療・・・厚労省資料の抜粋
https://www.sasakigp.co.jp/ssk/wp-content/uploads/2020/02/b797b83cc51b5aca5db09a995aae32c5.pdf

〇個別改定項目について・・・中医協_20200207
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000593368.pdf

医業経営支援課

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