【令和2年度診療報酬改定】働き方改革関連

長 幸美

アドバイザリー

前回、「自医療機関のポジショニングを決めましょう」という話をしましたが、今回は、地域の中で必要とされている「急性期医療」についてお話していきたいと思います。

今回の改定では、「働き方改革」が最重点項目として一つ目の視点にあげられていたことは記憶されていることと思います。短冊を見ていても、あちらこちらで、人の役割や配置の見直しが行われています。主に、過酷な勤務環境となっている救急医療体制における重要な機能を担う医療機関について、「地域医療の確保を図る」という観点から、評価を行うことが検討されてきました。
この中では、地域医療介護総合確保基金の中でも評価があり、診療報酬の評価の対象とならない医療機関(B水準相当)を対象として、地域医療に特別な役割があり、かつ過酷な勤務環境となっている医療機関について、医師の労働時間短縮のための体制整備に関し、支援していこうという動きもあります。

【地域医療体制確保加算(入院初日)  520点】 (新設)
救急医療を提供する体制、病院勤務医の負担軽減及び処遇改善に対する体制、その他について、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして、届出が必要です。
想定されている医療機関は、救急搬送(ヘリを含む)件数が年間2000台以上ある全国で約900件の医療機関であると聞いております。1日平均6台の救急搬送受入れの実績が必要であるということです。別の見方をすると、救急医療とは、1日6台の救急車を受ける医療機関だという風に定義づけられたとも解釈できます。

対象病棟は、以下の通りとされています。

キャプチャ

【救急搬送看護体制加算(夜間休日救急搬送医学管理料)】
夜間休日救急搬送医学管理料における救急搬送看護体制加算について、「救急外来への搬送件数及び看護師の配置の実績に応じた新たな評価区分を設ける」とされています。
救急患者の受入れを担当する「専任の看護師が複数名配置されている」ことと、救急搬送件数が1000件以上であることが要件となっています。これまでの加算は、要件はそのままで「2」に移行されます。

◆夜間休日救急搬送医学管理料
注3 救急搬送看護体制加算1  400点

 

【医師等の従事者の常勤配置及び専従要件に関する要件の緩和】
常勤換算の考え方が少し変わりました。
複数の非常勤職員を組み合わせて常勤換算でも配置可能としている項目について、「週3日以上かつ周22時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算」で配置可能とする、とされました。また、医師については、複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置を可能とする項目が拡大されました。告示や通知の細かい内容をよく読みこんで確認するようにしていきましょう。

◆医師について・・・緩和ケア診療加算
⇒専任の非常勤医師(3年以上の経験を有する医師に限る)を2名組み合わせる
栄養サポートチーム加算、感染防止対策加算、抗菌薬適正使用支援加算、も同様

◆看護師について
⇒外来化学療法加算について、非常勤職員デモ配置可能とする。

◆専従要件について・・・専任の配置でよいものが拡大されました。
⇒専従を求められる業務を実施していない勤務時間において、他の業務に従事できる項目を拡大する。

◆ウイルス疾患指導料(注2)
⇒当該療養を行うにつき十分な経験を有する「専任の看護師」が配置されていること

◆障害児(者)リハビリテーション料
⇒当該医療機関において、寝台血管疾患リハビリ以外の疾患別リハビリテーション、障害児(者)リハビリテーション及びがん患者リハビリテーションが行われる時間が当該保険医療機関の定める所定労働時間に満たない場合には、当該リハビリテーションの実施時間以外に他の業務に従事することは差し支えない。
週3日以上状態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務をおこなっている専従の非常勤のPT・OT・STでよいとされました。
がん患者リハビリテーション料についても同様

【医療従事者の勤務環境改善の取り組みの推進】
医療従事者の負担軽減・勤務環境改善の取り組みについて、管理者によるマネジメントを推進する観点から、多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議において、年1回以上当該病院の管理者が出席すること、とされました。
病院に勤務する医療従事者の勤務環境改善について、さらに進むようにいくつかの施設基準が見直しされています。

◆総合入院体制加算
⇒これまでの4項目に加え、3項目追加され、7項目の中から、3項目以上を含んでいることが求められています。
(7)病院の医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制として次の体制を整備していること
エ「医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」には次に掲げる項目のうち少なくとも3項目以上を含んでいること。
(イ) 外来縮小の取り組み・・・外来診療時間の短縮、地域の他の医療機関との連携など(許可病床400床以上の病院では必須)
(ロ) 院内保育所の設置・・・夜間及び病児保育の実施が望ましい
(ハ) 医師事務作業補助者の配置による勤務医の事務作業の負担軽減
(ニ) 病院勤務医の時間外・休日・深夜の対応についての負担軽減・処遇改善
(ホ) 特定行為研修修了者である看護師複数名の配置及び活用による病院勤務医の負担軽減
(ヘ) 院内助産又は助産師外来の開設による病院勤務医の負担軽減
(ト) 看護補助者の配置による看護職員の負担軽減

〔経過措置〕 令和2年7月までは改定前の基準で届出可能

【病棟薬剤業務実施加算の評価の見直し】
病棟薬剤業務実施加算については、20点の増点評価となっています。

看護師の負担軽減にもつながるものがあると思います。病棟薬剤業務を取り組んでおられる病院は病棟での薬剤管理や退院後の指導にも有効な状況があります。検討して見られるのもよいのではないでしょうか。

施設基準の要件としては、常勤薬剤師の複数配置を求めている要件について、週3日以上かつ周22時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能とする。ただし、1名は常勤薬剤師であることが必要と、基準要件が緩和されています。また、医薬品情報の収集及び伝達を行うための専用施設・・・医薬品情報管理室・・・を有し、院内からの相談に対応できる体制が整備されていること、と緩和されています。

※これは薬剤管理指導料についても同様とされています。

【夜間看護体制の見直し】
夜間における看護業務の負担軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備の要件について項目内容の見直しが行われました。もともと、6項目(ア~カ)であったものが、4項目追加されました。追加されたものは以下の4項目です。
⇒ア~ウ  (略)
エ 当該病棟において、夜勤を含む交代制勤務に従事する看護要員の夜勤後の暦日の休日が確保されていること
オ 当該病棟において、夜勤時間帯の患者のニーズに対応できるよう、柔軟な勤務体制の工夫がなされていること
カ~キ  (略)
ク 当該保険医療機関において、夜勤時間帯を含めて開所している院内保育所を設置しており、夜勤を含む交代制勤務に従事する医療従事者の利用実績がある
ケ 当該病棟において、ICT、AI、IoT等の活用によって、看護要員の業務負担軽減を行っていること
⇒上記「ク」については、利用者がいない日についてはこの限りではない
⇒障害者施設等入院基本料の注10、看護補助加算の注3、精神科救急・合併症入院料の注5に掲げる看護所億院夜間配置加算についても同様とされています。担当病棟がある医療機関様は確認してください。

【特定集中治療室管理料の見直し】
専門の研修を受けた看護師の配置について、より柔軟な働き方に対応する観点から要件の緩和が行われました。

⇒施設基準で、以下の文言が追加されました。
「なお、専任の常勤看護師を2名組み合わせることにより、当該治療室内に週20時間以上配置しても差し支えないが、当該2名の勤務が重複する時間帯については、1名についてのみ計上すること。」

【入退院支援加算3について、退院支援部門の看護師の配置要件を見直す】
これまで、「新生児の集中治療、入退院支援及び地域連携にかかる業務に関する十分な経験を有する専従の看護師」の配置が要件化されていましたが、今回の改定では、「十分な経験を有し、小児患者の在宅移行に関する研修を修了した専任の看護師」でよいこととされました。専任の看護師でよくなったことで、少し施設基準がとりやすくなったのではないでしょうか?
ここでも、複数の看護師の常勤換算でよいとされていますが、「週3日以上状態として勤務している所定労働時間が22時間以上の勤務」ということがあり、入退院支援加算2・3及び入院時支援加算における入退院支援部門の専従職員についても同様とされています。

【医師事務作業補助体制加算の評価の充実】
医師事務作業補助者は、慢性期の病棟であっても、非常に有効であると報告もされていますし、算定が可能な病棟等を拡大されました。
さらに、点数の配点は、50点アップしています。まだ基準を取得されていない医療機関、有床診療所も算定を検討してみられては如何でしょうか? 研修要件はありますが、検討してみる価値はあると思います。

結核病棟入院基本料・・・50対1、75対1、100対1
有床診療所入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、特殊疾患病棟入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料についても同様
回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料/入院医療管理料、精神科急性期治療病棟入院料2についても同様

【麻酔科領域における医師の働き方改革の推進】
麻酔管理料(Ⅱ)について、麻酔を担当する医師の一部の行為を、適切な研修を修了した看護師が実施しても算定できるように見直しされました。また、麻酔前後の診察について、当該保険医療機関の常勤の麻酔科標榜胃が実施した場合についても算定できるように見直しされました。
この医師の要件は、週3日以上かつ週22時間以上の勤務を行っている医師であるということが、条件となっています。さらに、麻酔を担当する医師の一部の行為を、麻酔中の患者の看護にかかる適切な研修を修了した常勤看護師が実施しても差し支えないものとする。また、この場合において、麻酔前後の診察の内容を当該看護師に共有すること、という文章が追加されています。

適切な研修」とは、保健師助産師看護師法第37条の2台5号の規定による指定研修期間において行われる麻酔中の患者の看護にかかる研修とされています。かなりハードルは高いと思いますが、急性期の手術件数が多い医療機関においては、検討されてもよいのではないでしょうか。

【看護職員と看護補助者との業務分担・共同の推進】
看護職員夜間配置加算の評価を充実するとされていて、点数の配置は10点ずつ増点しています。地域包括ケア病棟入院料の加算においても、精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料においても、同様に評価がアップしています。

⇒看護職員夜間配置加算・・・12対1、16対1
地域包括ケア病棟の注・・・
⇒急性期看護補助体制加算、夜間30対1急性期看護補助体制加算・・・30点アップ
⇒看護補助加算
⇒療養病棟入院基本料の夜間看護加算・・・10点アップ
⇒地域包括ケア病棟の注加算(看護補助者配置加算)・・・10点アップ
⇒急性期看護補助体制加算・・・院内研修の内容
⇒療養病棟入院基本料の注1

【医療機関における業務の効率化・合理化】
医療機関における、「医療安全管理体制」「抗菌薬適正使用支援チーム」「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の院内研修の指導者にかかる要件の見直し」栄養サポートチーム加算・外来緩和ケア管理料・がん患者指導管理料」等の要件について、見直しが行われました。

◆医療安全管理体制の基準・・・安全管理委員会の開催について
月1回委員会(安全管理責任者で構成される)を開催することが要件となっていますが、条件はありますが(安全管理責任者が必ずしも対面でなくてもよいと判断した場合)、対面によらない開催も可能、つまりWeb会議の開催でもよいとされました。
⇒これは、院内感染防止対策の基準、医療安全対策加算についても同様です。

◆抗菌薬適正使用支援加算・・・研修会実施のルール見直し
必要な研修は、感染防止対策加算と合わせて実施でよい。

◆急性期看護補助体制加算・・・
⇒院内研修は1年目1回以上受講している場合、2年目以降の受講は省略できる
⇒看護補助加算、療養病棟の夜間看護加算、障害者施設等入院基本料の看護補助加算、地域包括ケア病棟の看護補助者配置加算についても、同様に緩和されています。

◆一般病棟用の重症度、医療・看護必要度・・・指定研修修了者以外の研修実施も可能
⇒特定集中治療室用、ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度についても同様とされました。

◆栄養サポートチーム加算(注2)・・・診療録への記載要件の緩和
⇒栄養治療実施計画の写しを診療録に添付すればよいとされました。
外来緩和ケア管理料中4についても同様

◆がん患者指導管理料「ハ」・・・診療録への記載要件の緩和
⇒説明文書の写しを診療録等に添付することでもよいとされました。

◆退院時共同指導料1及び2・・・診療録への記載要件の緩和
⇒要点を診療録に記載、または患者・家族に提供した文書の写しを診療録に添付することでもよいとされました。

◆在宅療養指導料・・・医師の診療録への指示事項の記載要件を削除
⇒保健師、助産師又は看護師が療養指導記録を作成し、指導記録に要点・時間を明記することでよいとされました。
糖尿病合併症管理料、糖尿病透析予防指導管理料についても同様とされました。

今回、研修要件、カルテへの記載要件についても見直しが行われています。
これはかなり画期的なことだと思います。
研修内容、カルテへの記載内容について、再度見直しを行い、重複の記録がないか、計画書の添付で、要件を満たすものもあります。しっかりと確認して、記載漏れがないようにしていきましょう。

【情報通信機器を用いたカンファレンス等の推進】
情報通信機器を用いたカンファレンス等について、見直しが行われ、今まで「やむを得ない事情により対面で参加できない場合」でないと認められていませんでしたが、通常の状況でも可能となるように要件の見直しが行われました。
また、退院時共同指導についてもWeb会議で可能になります。

感染防止対策加算1、感染防止対策加算、入退院支援加算1、退院時共同指導料2の注3、在宅患者緊急時等カンファレンス料、在宅患者訪問褥瘡管理指導料、訪問看護療養費における在宅患者緊急時等カンファレンス加算で、基準が変更となっています。

◆退院時共同指導料・・・対面が原則とされていますが、Web会議でも可能となりました。
訪問看護療養費における退院時共同指導加算も同様になります。

【外来栄養食事指導(情報通信機器の活用)の見直し】
2回目以降の栄養食事指導について、情報通信機器を用いて行う指導を評価され、オンラインの料金が設定されました。通常の診療報酬より20点減額されていますが、働き盛りの生活習慣病など、有効な事例が増えるのではないでしょうか。

◆外来栄養食事指導料・・・月1回限り
・医師の指示に基づき、電話または情報通信機器等により、必要な指導を行う場合に算定が可能となりました。

【診療情報の提供に対する評価の新設】
かかりつけ医機能を有する医療機関等から紹介された患者に対して、継続的な診療を行っている場合に、紹介もとのかかりつけ医機能を有する医療機関等からの求めに応じて診療情報の提供を行った場合の評価を新設されています。

◆診療情報提供料(Ⅲ) 150点
⇒かかりつけ医・・・地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療慮または在宅療養支援病院に限る、施設入居時含む))、を届け出ている医療機関
⇒上記かかりつけ医からの紹介された患者・・・3月に1回に限り参加もしくは産婦人科(妊娠している患者)・・・1月1回に限り

このほかにも、チームカンファレンスが必要な施設基準、専従要件がある施設基準など、たくさんあります。ここには掲載しきれていない内容もあるかもしれません。また、連携にかかるものについては、Webカンファレンス(会議)での対応が可能になっており、基準が緩和されてきています。対応の幅も広がり、多職種のチームで、より質の高い医療サービスの提供や生活の支援を行うことにより、地域完結型医療の実現が求められています。
「地域医療構想」のなかで、どの立ち位置になるのか・・・検討し、医師を明示すべき時が来ていると思います。こういった意味では、今回の改定はシビアな改定になっているのではないかと思います。
皆さんの医療機関が実施している診療内容と診療体制、配置人員、勤務状況、資格要件などをしっかりと把握・整理され、告示が出た後、個別にご確認・対応ください。

<参考資料>
〇中医協(20200207)「個別改定項目について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000593368.pdf

医業経営支援課

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