賞与について

佐々木総研

人事労務

今年も年末に差し掛かり、賞与支給を考えられている事業主様や既に賞与支給している会社・事業主様も少なくないのではと思われますが、今回はその賞与支給に関するところを述べたいと思います。

そもそも賞与は賃金の一種ですが、月の給与とは異なり、労働基準法上支給が義務付けられているものではありません。裁判例でも賞与は「契約によって賞与を支払わないものもあれば、一定条件のもとで支払う旨定めるものもあって、賞与を支給するか否か、支給するとしていかなる条件のもとで支払うかはすべて当事者間の特別の約定(ないしは就業規則等)によって定まると言うべきである」と述べている裁判例があります。ただ、法令上賞与を支給する場合には賞与に関する定めを就業規則に記載することが必要で(労働基準法89条)、この就業規則に賞与についてどのように記載がされているかで問題が発生する場合があります。

具体的にどのような事かというと、仮に就業規則(給与規程)等に、「賞与は○月、○月に支給する」という条項のみである場合、または「賞与は基本給の○ヵ月分を支給する」等を明記している場合は賞与について柔軟な対応が難しくなるという事です。業績が非常に安定しており、賞与を安定的に支給しても会社の経営に心配がない場合であれば問題ありませんが、特に会社の業績が苦しくなってきた際、上記のような就業規則だと賞与を不支給にすることが出来ないという事になってきます。また仮に勤務態度や成績等で問題がある社員・職員に対して賞与をあまり出したくないというケースがあるとしても、不支給という柔軟な運用は難しい事になります。そこで、「会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給時期を延期し、または支給しないことがある」、次に「賞与の額は、会社業績を基として、本人の勤務成績や勤務態度、能力などを考慮して各人ごとに決定する。」等の項目を加えておくと柔軟な対応が可能となります。

その他、賞与支給で時折問題となるのが賞与支給の要件として、賞与支給日に在籍していること(賞与支給日在籍要件)がありますが、これは最高裁判所の裁判例でも認められています。逆にいうと、賞与支給日に在籍している事を支給の要件としていなければ、賞与の評価対象期間に在籍した方は賞与支給日に退職していたとしても賞与を支給する必要がありますので、ご注意頂ければと思います。

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