労務管理のポイント『休職中に、本人負担の社会保険料を事業所が負担する場合』

森 𠮷隆

人事労務

Q:当院の職員がプライベート時での事故で、2~3月程度入院することになり、その間休職することとなりました。なお休職中は無給で、期間もさほど長く無いことから、本人負担分の社会保険料は今回事業所が肩代わりし、本人には徴収しないようにしようと思うのですが、問題ないでしょうか。

A:健康保険料および厚生年金保険料といったいわゆる社会保険料の被保険者の負担分を、事業所が本人に代わって負担し、今後も徴収しないことは、本人に対して経済的利益を与えているという点もあり、決して禁止されている訳ではありません。しかし、職員本人にとって法律上当然に生じる義務を免れるという点において、職員が本来負担すべき保険料に相当する額は「賃金」とみなされます。(健康保険上は「報酬」と呼ばれ、原則として被保険者が事業主から労働の対償として受けるものとされます。)

 

今回の場合、職員本人が健康保険の被保険者であるならば、原則として傷病手当金が支給されるはずですが、この傷病手当金については、報酬の一部が支給され、なおかつその額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

傷病手当金は、休業1日につき、標準報酬日額の2/3が支給されますが、今回の場合、原則として、その額から1日分の社会保険料相当額を差し引いた分が支給されることとなります。

上記の事から、休職中は勿論、それ以外の期間においても職員の社会保険料を事業所が全額負担することは、処理上の課題も含めて、一般的にはあまりお勧め出来るものではないと思われます。

なお本人負担分を事業所が肩代わりしない場合(とはいってもこちらが本来の形ではありますが)であっても、休職等で職員の月額の給与が無給になった場合、本人の社会保険料負担分の徴収方法等については、事前に取り決めしておいた方がよいでしょう。既に就業規則等規程に定めがあってそれを運用していれば問題ないでしょうが、そのような定めがない場合、本人負担分の社会保険料等について、例えば「毎月●日に所定の口座に振り込む」や「職場復帰後、一括して支払う」等、休職期間や負担額等を考慮しながら、事業所と本人で予め話し合って決めておくことが望ましいでしょう。

それいゆ2013年12月号掲載記事

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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